来月開幕するミラノ・コルティナ冬季五輪に米国移民税関捜査局(ICE)要員が保安支援に参加すると判明し、イタリアの政界と社会全般に波紋が広がっている。
27日(現地時間)米国国土安全保障省(DHS)とICEは、今回の冬季五輪にICE傘下の国土安全保障捜査局(HSI)要員を派遣すると正式発表した。
移民税関捜査局という名称のためICEは米国内でのみ活動する組織のように見える。しかし実際には傘下に多様な部門を抱えている。五輪に派遣されるHSIは、人身売買、麻薬密輸、偽造旅券のような国境をまたぐ犯罪を追跡する部門だ。不法滞在の取り締まり過程で物議を醸したICE内の別部門EROとは、根本的に担う業務が異なる。
国際犯罪は米国外で情報を収集しなければ捜査が不可能だ。とりわけ五輪期間には、HSIが収集した情報を選手団の移動経路と宿泊先の安全点検に活用する。このためHSI要員は平時から世界各地の大使館と領事館に常駐し、現地当局と協力している。今回の五輪でもHSIは、危険人物・危険経路・身分偽装の可能性といった情報を事前にふるいにかけ、外交保安局に伝達する役割を担った。現場で逮捕や摘発を行う組織ではなく、背後で危険信号を選別する分析チームに近いという意味である。
NBCによると、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は1992年バルセロナ五輪以降、国務省外交保安局(DSS)とこの方式で緊密に協力してきた。2024年パリ五輪の際にもICE傘下のHSI要員がフランス当局と情報協力を行った前例がある。米国側は今回の派遣もその延長線上にあると強調した。とりわけ今回の米国代表団にはJ.D.バンス副大統領とマルコ・ルビオ国務長官などトランプ政権の中枢人事が多数含まれる予定で、情報支援の重要性も高まった。
ICE報道官は声明で「五輪の保安作戦は全面的にイタリア当局の権限下にある」とし、「派遣されるICE要員は国務省外交保安局を支援し、超国家的犯罪組織の脅威を識別してリスクを低減する役割を果たす」と明らかにした。
問題はICEという組織が持つ象徴性と最近の行動だ。ICEはトランプ政権の不寛容な移民取り締まりを最前線で執行している。とりわけイタリア世論が激昂した決定的契機は、最近米国ミネアポリスで発生した銃撃事件だ。連邦の移民取り締まり活動の過程で民間人の死亡事件が相次ぎ、イタリアのみならず国際的に連邦移民機関全般への批判世論が拡散した。この余波で、ICE傘下の組織が五輪の保安支援に関与するという事実自体がイタリア社会に不安を刺激した。
開催都市ミラノのジュゼッペ・サーラ市長は即座に反発した。イタリアメディアのイル・ファット・クオティディアーノによると、中道左派性向のサーラ市長はラジオインタビューでICEを「人を殺す民兵組織(militia that kills)」と強い言葉で非難した。続けて「彼らはわれわれの民主的な治安管理の方式に合致しない組織だ」として、派遣撤回を求めた。
イタリアのメディアと政界の反応も冷ややかだ。野党と市民社会は、メローニ政権が米国の圧力に屈して主権を侵害される余地を残したと批判した。イタリアの有力メディア、ラ・スタンパは「大西洋の向こう側だけでなく多くの人々にとってICEは恐怖の同義語だ」と指摘した。現地メディアの大勢も「トランプの『移民狩り』は五輪という平和の祭典にふさわしくない」という論調を続けている。ミラノ市内には「ICEは出て行け(ICE OUT)」「ICEは小児性愛者を保護する」といった過激な文句が書かれたポスターが貼られたとも、ユーロニュースは伝えた。
波紋が広がるなか、ジョルジャ・メローニ首相が率いるイタリア中央政府は火消しに動いた。右派性向のメローニ政権はトランプ政権と概して友好的な関係を維持している。アントニオ・タイアーニ副首相兼外相は「米国要員がミネアポリスの街頭でのように行動することはない」とし、「まるでナチ親衛隊(SS)が来るかのように言うが、そうではない」と線を引いた。タイアーニは「イタリアの街頭治安はカラビニエリ(憲兵隊)と警察だけが担う」と強調した。マッテオ・ピアンテドージ内相もティルマン・フェルティッタ駐イタリア米国大使と会い「ICE要員は外形的な公共秩序維持の機能は持たない」と再確認した。
専門家は、今回の論争が米欧間の価値衝突に発展する兆しが見えるとした。トランプ大統領就任以降、米国第一主義と反移民政策が強化され、これに拒否感を抱く欧州内の世論が五輪という国際行事を機に噴出したとの評価だ。イタリア政府は要員の活動範囲を厳格に制限すると約束した。しかし五輪期間中に米国要員と現地市民の間で些細な摩擦でも生じれば、外交的な対立に発展する可能性も排除できない。