ドナルド・トランプ米政権の「グリーンランド併合」をめぐり米欧間の緊張が高まるなか、米国が天然ガスをてこに欧州を圧迫し得るとの見方が出ている。
26日(現地時間)、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「欧州の米国産天然ガス依存度が高まるにつれてトランプの影響力も強まっている」という見出しの記事で「グリーンランドをめぐる緊張が高まるなか、トランプ政権が米国の石油・ガス産業を欧州への圧力手段として活用し得るとの懸念が提起されている」と報じた。
欧州は2022年にロシアがウクライナに侵攻するまで天然ガスの大半をロシアから輸入してきた。2019年時点でロシア産天然ガスは欧州連合(EU)全体のガス輸入量の半分以上を占めるほどだった。しかし欧州がウクライナ侵攻を理由にロシアを強く批判すると、ロシアは天然ガス供給を遮断して対抗に出て、欧州もロシア産ガスの輸入を段階的に減らしてきた。
この過程で米国産天然ガスがロシア産の代替として浮上した。米国は2022年末から大量の液化天然ガス(LNG)をオランダ、フランス、ベルギーなど欧州の港に輸送し、ロシア産燃料を代替してきた。2019年末時点でEU全体の天然ガス輸入量に占める米国産の比率は約5%にすぎなかったが、昨年は4分の1以上に高まったと推定される。
こうした流れはトランプ政権の政策基調とも符合する。「アメリカ・ファースト(America First・米国優先主義)」を掲げるトランプ政権は昨年、EUと締結した貿易協定の一環として欧州の米国産LNG輸入拡大を誘導してきた。市場調査機関ブリュゲルによると2025年、米国からEU諸国へのLNG輸出量は前年比約60%増加した。
欧州の米国産天然ガス依存度が高まる状況下で、最近のグリーンランド併合問題をめぐる対立は供給停止リスクへの懸念を強めている。欧州では、トランプ大統領が石油・ガス産業部門で米国が確保した強力な地位を他国への圧力手段として活用し得るとの不安が広がっているとNYTは伝えた。
コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センターのパリ駐在研究員アンヌ・ソフィー・コルボーは「最近、人々が我々が米国産LNGに過度に依存しているという事実に気づき始めた」と語った。
欧州は風力や太陽光など再生可能エネルギーの拡大に取り組んでいるものの、依然として家庭の暖房や産業生産で天然ガスへの依存度が高い。このため米国が供給停止という極端な措置を取れば、欧州が被る打撃は相当なものとなる。コンサルティング会社リスタッド・エナジーの主席アナリスト、クリストフ・ハルセンは「欧州には実質的に代替がほとんどない」と指摘した。
ただし、米欧間の政治的緊張が高まっても、トランプ政権が実際に天然ガスの輸出停止に踏み切る可能性は低いとの分析が優勢である。デービッド・ゴールドウィン、ゴールドウィン・グローバル・ストラテジーズ代表は「天然ガス輸出の停止は市場に極めて否定的なシグナルとなるだけでなく、政権が支援を約束した産業の競争力を大きく損なう」と述べた。
また米国のエネルギー産業の構造は、クレムリンの影響力が絶対的なロシアとは本質的に異なるとの評価もある。グローバル経済分析機関オックスフォード・エコノミクスのジャック・リードは最近の研究で「クレムリンは国営ガス独占企業であるガスプロムを活用し、2022年にガスの流れを兵器化できた」としつつ、「米国の場合、欧州向けの物量を完全に停止するより、他地域へ振り向ける可能性が高い」と展望した。