米国で高インフレが長期化するなか、ドイツのディスカウント系スーパー大手のアルディが台頭している。食料品価格が急騰する中で、低価格を最優先に掲げるアルディの事業モデルが米国の消費環境に合致したとの評価である。
米ワシントン・ポスト(WP)によれば、ドイツに本社を置くアルディは今年、米国進出50周年を迎え、31州で180店舗を開業し、全米の店舗数を約2800店に増やして攻勢をかける。企業は2028年までに計3200店舗の確保を目標に、90億ドル(約13兆ウォン)を投資する方針だ。これについて不動産サービス大手JLLは、アルディが2019年から2024年まで店舗数と売り場面積の拡大の両面で競合を上回ったと診断した。
急速な成長は指標でも確認できる。前述の通りアルディの米国売上高は2024年時点で541億6000万ドルを記録し、前年比14%増となった。3世帯に1世帯の割合でアルディで買い物をしている計算である。来店動向を分析する企業プレイサー・ドット・アイによれば、昨年もアルディの訪問客数は前年比8%増、第4四半期の増加率は9.7%に達した。これに対し競合のクローガーとアルバートソンズは同期間の来店増加率がそれぞれ0.8%、1.6%にとどまった。
アルディの競争力は徹底したコスト削減の構造に起因する。店頭商品の約90%がPB(プライベートブランド)で構成され、中間流通コストが小さく、店舗規模が小さいため人員と在庫の負担が少ないことが特徴だ。例えばアルディの大半の商品は箱のまま陳列され、客は会計後に自ら商品を袋詰めする必要があるため、少人数でも店舗運営が可能である。
あわせてアルディは、市場参入初期に価格を攻めて顧客層を取り込み、その後は一定水準の品質を維持して再来店率を高める戦略を貫いてきたが、米国でもこの戦略が奏功しているというのが専門家の分析である。カトリン・ギレンス・ティルブルフ大学経営学科教授は「アルディは先に英国進出の際にもテスコなど現地のスーパーを相手に価格競争を引き起こした」と述べ、「アルディの戦力を過小評価すれば市場全体が崩れかねない」と診断した。
実際に家計の食料品負担が増す中で、消費者はブランド忠誠度よりも価格を最優先する方向に動いている。米労働統計局(BLS)によれば、新型コロナウイルス流行以降、食料品価格は約30%上昇し、総合インフレ率(約26%)を上回ったほか、昨年12月も前年同月比2.4%の上昇を示し、なかなか鈍化していない。これを受け、昨年1〜10月のPB商品の販売量は0.3%増えた一方、全国ブランドの販売量は0.7%減少したとの統計も公表された。
コンサルティング業界は、こうしたトレーディングダウン(重要視しない品目で低価格志向を示す現象)の潮流がアルディに追い風になったとみている。経営コンサルティング会社アリックスパートナーズのジョン・クリア小売部門パートナーは「伝統的な大手食料品店から離れる消費者が急速に増えている」と述べ、「ブランドの価値提案が弱い領域では、アルディ、リドル、コストコなど倉庫型ディスカウント店の影響力はいっそう強まるだろう」と診断した。
ただし品揃えが限定的で、いわゆる『ワンストップショッピング』が難しい点は弱みと指摘される。これを踏まえ、アルディは競合他社の近隣に出店する戦略をとっている。「ウォルマートの駐車場近辺が最適な立地だ」というフレーズがアルディ内部で流行している理由である。
一部では、選択肢を絞るシンプルな購買体験自体が競争力になり得るとの分析も出ている。クリア・パートナーは「米国の消費者は、当初考えていたほど多くの選択肢を必要としていないことに気づきつつある」と語った。