テンセント(腾讯)、アリババなどが競合する中国のクラウド市場が、価格競争から離れ「AI応用戦」へと急速に再編されているとの分析が出ている。業界は今年を起点に、クラウド各社の勝負どころが利用量・価格競争から、企業向けソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS)などAIソリューションの高度化競争へと移ると見込んでいる。
23日、中国の経済メディアである第1財経によると、テンセントクラウドは22日のイベントで、過去1年間にAIおよびソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS)関連の受注が2倍に増加したと明らかにした。発表によれば、AI大規模モデル製品の売上は2年間で50倍以上に増加し、パートナー企業のパブリッククラウド(インターネットで誰でもアクセスできるクラウドコンピューティングサービス)の売上も2桁の伸びを記録した。
急速な成長の背景には、世界を驚かせた「DeepSeek(ディープシーク)」の登場がある。中国のAIスタートアップであるDeepSeek(ディープシーク)は昨年年初に同名のAIモデルを披露し、OpenAIの「ChatGPT」と比べて画期的に低いコストで注目を集めた。DeepSeek(ディープシーク)公開後、中国企業のAI活用が本格化し、大規模な演算資源の需要が増加、この需要がクラウド市場の規模を急速に押し上げた。
競合のアリクラウド・インテリジェンスの劉偉光総裁は第1財経に対し、「2026年の中国AIクラウド市場の規模増加分の10%が昨年の市場全体の規模より大きくなる」と見通しを述べ、「増加分の80%を取りにいく」と語った。
これを受け、クラウド各社は低価格で利用者を呼び込む手法から離れ、AIソリューションを高度化して利用者をつなぎ留める戦略へと転換している。先に中国では2024年にクラウド各社の大規模モデルの低価格競争が始まり、テンセントクラウド、アリクラウド、バイドゥ(百度)クラウドなどの大規模モデルサービスはChatGPTより数百倍安い価格でほぼ無料に近い形で提供された。
しかし業界は、価格を下げて利用量だけを増やす方式はもはや持続可能ではないと判断した。競争的な値下げによる収益性の低下はもちろん、顧客離れが頻発してロイヤルティを確保できないためだ。こうした競争が続けばチキンゲームに陥らざるを得ないとの懸念もあった。
クラウド各社は各種大規模モデルの活用シナリオを設計し、顧客を囲い込む戦略へと舵を切っている。例えば、AIハードウエア企業と協業する際、単にパブリッククラウドの演算資源の消費を増やすにとどまらず、音声・映像機能の提供やプラットフォーム連携などの付加機能を組み合わせたSaaS製品で収益を拡大する形だ。
テンセント側はAI競争を「前半戦」と「後半戦」に区分した。2024年下半期から2025年上半期にかけては、グラフィックス処理装置(GPU)などの演算資源の確保と値下げによる利用者の獲得が核心だったが、2026年からは企業向けAIソリューション製品の販売による利用者の囲い込みが勝負どころになると見立てた。産業別では、製造・品質検査、エネルギー、医療などの伝統産業でもAIの適用が拡大しているとテンセントは説明した。
テンセントグループの副総裁である李強(リー・チャン)は「グローバルな競争力を備えた先頭の大規模モデルの性能格差が縮小している点も重要な変数だ」と述べ、「性能差が縮まるほど、結局は現場(業務)の課題をいかに的確に解決するかへと競争が移る」と伝えた。