バルト海沿岸の小国エストニアがAI強国として台頭している。エストニアはAI基盤の教育統合プログラムを推進中で、AIを活用したがん診断支援技術と自動化されたデジタル行政サービスを広めている。さらに政府は司法分野でもAI適用を積極的に模索中である。ChosunBizはエストニアの各分野でAIを活用する実務者に取材し、エストニアがAI強国へと生まれ変わることができた秘訣を探る〔編集部注〕

カメル・テルリス駐韓エストニア大使館公館次席。/ヒョン・ジョンミン記者

「エストニアは独立直後の1990年代からデジタル化と技術革新を国家の中核戦略として維持してきた。政権やイデオロギーが変わっても『デジタル・ファースト』の基調は変わらなかった。革新を先送りしない決断力が今日のAI強国エストニアをつくったのだと思う」

カメル・テルリス駐韓エストニア大使館の公館次席はChosunBizとの対面インタビューで、エストニアの人工知能(AI)発展の秘訣についてこう説明した。テルリス公館次席は約10年間、民間と政府の双方を経験した通商・投資分野の専門家である。政府合流以前は法律事務所で弁護士として勤務し、企業を間近で支援した。

テルリス公館次席は、ソ連崩壊直後に周辺国との格差を迅速に縮めねばならなかった歴史的背景、人口が広く分散して行政アクセス性が低かった地理的特性などが、実用性を追求する政府方針と相まってエストニアのAI競争力を生み出したと分析した。現在エストニアは約60の政府機関でAIを活用するまでに進展を重ねている。以下、テルリス次席との一問一答。

―エストニアはAI分野のグローバルな先導国と評価される。AI競争力はどこから生まれるのか。

「エストニアのAI競争力は強力なデジタル政府インフラから生まれる。エストニアはすでに数年前からほぼ100%に近い公共サービスをオンラインで提供してきた。納税、処方箋の発行、婚姻届の提出、総選挙の投票まで、すべて24時間オンラインで処理可能だ。この過程で構造化された公共データと相互運用可能なネットワークシステム、デジタルIDインフラなどが蓄積され、何よりデジタルサービスに対する国民的信頼が形成された。AIの発展はこうした環境を土台に自然に実現したのだ」

―AI政策が短期間で推進されたわけではないという意味か。

「そのとおりだ。突如として政策だけを押し通すには限界がある。すでにデジタル・データ基盤の行政システムが円滑に作動していたからこそ、AI導入も容易に進められたということだ。エストニアは先に1990年代、全教室にコンピューターを導入する『タイガー・リープ(Tiger Leap)』政策を起点に親デジタル文化を築いてきた。この流れを受け継いだのが昨年導入された『AIドヤク(AI Leap)』政策である。過半の学生が学業過程でAIチャットボットを使用することについて、政府は面罵(shame)を与えるのではなく、責任ある使用方法を制作(shape)し教育する方策を選んだ。これは急速に成長するAIに向き合うエストニア政府の姿勢をよく示している」

―実際に公共部門ではAIをどう活用しているのか。

「現在エストニアの公共部門では65機関で130件以上のAI活用事例が報告されている。この数値は毎年迅速に更新される傾向だ。ただし留意すべきは、これらの大半は大規模プロジェクトというより行政効率を高める小規模ツールに近いという点である。例えば国税庁はAI基盤の脱税検知システムを活用し、納税過程全般をモニタリングしつつ大規模な脱税案件を中心に人員を重点配置する。雇用保険基金もAIを活用して長期失業リスク群の求職者を早期に識別し、政策支援につなげる。国会では会議 内容がAI転写プログラムで自動記録される。

政府チャットボット『ビューロクラット(Bürokratt)』も欠かせない。ビューロクラットは複数省庁に分散した公共サービス情報を統合して案内し、数十の政府機関の情報が一度に提供されるという利点がある。総合すると、反復的で消耗的な業務はAIが担い、高付加価値業務と最終判断は人間が担う」

エストニア政府のチャットボット「ビューロクラット」。各省庁のホームページにアクセスすると、右下のウィンドウから希望するサービスを受けられる。/エストニア情報システム庁ホームページの画面キャプチャー

―他国と比較したときのエストニアAI戦略の差別化点は何か。

「エストニアのAI戦略は人間中心(human-centric)のアプローチを前提とする。政府はAIで市民を代替しようとしているわけではない。あくまで市民の福祉と効率を高めるためにAIを一つのツールとして積極活用するということだ。市民の権利や義務に影響を及ぼすAIシステムは必ず人間の監督と最終承認が必要であり、アルゴリズムは説明可能で透明に構築されねばならない。

これを可能にするためエストニア政府は電子政府(e-governance)プラットフォームを運用しており、ここには政府で使用されるAIシステムのアルゴリズムなどの情報が公示される。あわせて政府はAIで発生し得る付随的な問題、例えば就職難や高齢層のデジタル・リテラシー格差なども併せて埋めていっている。全世代を対象にした生涯教育と官民連携のAI教育を拡大しているのも、こうした取り組みに当たる」

―デジタル政府の拡大に伴う情報セキュリティの問題はないのか。

「デジタル政府の核心は信頼だ。そして信頼は情報の透明性と強力なセキュリティという二つの要件がいずれも満たされて初めて維持できる。政府は国民の信頼を損なわないためにセキュリティへ継続的に取り組んできた。先に2007年、エストニアは大規模なDDoS攻撃で主要電算網が麻痺する前例のない事態に直面した。当時サイバー攻撃が政府中央省庁、首相室、議会、銀行などに無差別に加えられ、インターネットが2週間近く麻痺したが、これを機に政府横断でセキュリティを一層強化することになった。

一例としてエストニアは2018年、世界で初めてデータ大使館(Data Embassy)を設立した。国家の中核データの写しを分散保存し、地政学的な危機状況でもデジタル基盤の国家が継続できるように設けた仕組みだ。NATO(北大西洋条約機構)サイバー防衛センターと欧州連合(EU)のIT関連機関もエストニアに所在しており、これはエストニア政府がどれほどセキュリティに力を注いでいるかを象徴的に示す」

―韓国とのAI協力の可能性をどう評価するか。

「エストニアと韓国はAI分野で非常に自然なパートナーだと考える。両国はいずれもデジタル政府とICTインフラがすでに高度化しており、技術革新を国家戦略の核心とするという共通点がある。また両国は共通の課題に直面している。地政学的にサイバー攻撃の問題にさらされており、高齢化社会に入り、人材難という国家的課題を解決しなければならない。こうした観点で両国の協力ポテンシャルは非常に大きいだろう。

多様な分野の中でも、教育でのAI活用の側面で協力の可能性が大きいと考える。韓国は教育に積極的な投資を展開しており、駐韓エストニア大使館のレベルでも教育分野で多様な交流が行われていると承知している。あわせてスマートシティ・ソリューション、倫理的AIガバナンスの構築でも両国の活発な協業を期待する」

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