北アフリカのチュニジアが古代ローマ時代の名声を再現し、世界のオリーブオイル市場を再編している。イタリア、ギリシャといった名だたる欧州のオリーブオイル産地が気候危機で苦戦する一方、チュニジアは単独で記録的な豊作を収めた。チュニジア政府はオリーブオイルを単なる農産物ではなく国家の戦略資産に格上げし、大規模な経済外交に乗り出した。
農業金融分野で信頼度が高い金融機関のオランダ・ラボバンクは1日(現地時間)、今年のチュニジアのオリーブオイル生産量が最低38万トンから最大40万トンに達すると分析した。昨年の生産量28万トンを35%以上上回る記録である。ナジェ・サイディ・ハメド・チュニジアオリーブ生産者協会長はフィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで、今年の収穫量をこれより多い最大50万トンと見込むと述べた。これはチュニジアのオリーブ業界における歴代最高値だ。
米国農務省(USDA)傘下の海外農業局(FAS)によると、現在の世界のオリーブオイル生産量は約270万トンと推定される。一方、消費量は300万トンを大きく上回る。生産量比で約10%に相当する30万トン程度の供給不足が発生している。主産地であったイタリアとギリシャで相次ぐ干ばつにより生産量が半減したためだ。
ギリシャは2024年の生産量が2023年比で49%急減した。イタリアは昨年の生産量が2024年に比べて39%減少した。チュニジアが今年の予想どおりオリーブオイルを38万トン以上生産すれば、イタリアとギリシャの空白を補って余りある。同時に両国を抑え、スペインに次ぐ世界2位のオリーブオイル生産・輸出国として台頭する見通しだ。
オリーブオイルはチュニジアの農産物輸出額全体の40%以上を占める。国家の貿易収支の改善に大きく寄与している。チュニジア政府もオリーブオイルを単なる食品ではなく文化商品かつ戦略資産として扱っている。チュニジア政府は、イタリアとギリシャが気候変動に伴う深刻な干ばつとオリーブ萎縮病で壊滅的な危機に直面する間、干ばつに強い自国品種「シュトゥイ」と「シェミラリ」の苗木をさらに植えて生産量を拡大した。
昨年チュニジア外務省は、欧州諸国に隠れがちだったチュニジア産オリーブオイルを外交の中心に引き込んだ。モハメド・アリ・ナフティ外相は12月22日を「チュニジア・オリーブオイル外交の日」と宣言した。オリーブオイルを媒介に観光、物流、国際協力を引き出す高度な外交戦略である。ナフティ外相は「チュニジア全土の1億本のオリーブの木と200万ヘクタールのオリーブ農園は単なる農地ではない」とし、「オリーブはチュニジアの主権と経済的自立を象徴する」と述べた。続けて、樹齢が2500年を超える国内最古のオリーブの木「シャラフ・ザイトゥナ」に言及し、「チュニジアは地中海農業において真の正統国家だ」と強調した。
韓国を含むアジア圏ではチュニジア産オリーブオイルはなじみが薄い。チュニジア産オリーブオイルはこれまで約80〜90%が大容量(バルク)状態で欧州、特にイタリアへ輸出されてきた。チュニジア産オリーブオイルは価格競争力で他の欧州産を圧倒する。チュニジアの農業労働者の平均賃金はイタリアやスペインに比べ5分の1から10分の1水準である。加えてサハラに隣接する北アフリカの日差しは病害虫被害を防いでくれる。相対的に緯度が高い欧州に比べ有機栽培が容易だ。数値上、チュニジア産プレミアムオリーブオイルの生産原価は欧州産より約30〜40%割安だ。それでもオリーブオイルの核心的な品質指標に当たる酸度(acidity)は世界で最上級と評価される0.2〜0.3%を維持している。
イタリア企業は自国の生産量が不足するたびに、相対的に安価なチュニジア産オリーブオイルを大量に調達し、イタリアのブランドで再輸出してきた。EUの域内加工制度(IPR)の規定によれば、イタリアのオリーブオイルブランドは自国産とチュニジア産オリーブオイルを混合して販売できる。製品の裏面に「欧州連合・非欧州連合(non-EU)ブレンド」と小さく表記さえすればよい。さらにはチュニジア産オリーブオイルを単に瓶詰めするだけでも、「イタリアで瓶詰め」と記載すれば販売可能だ。
専門家は今年がチュニジアがオリーブオイル市場で頭角を現す最適の時期だとみている。欧州の主要生産国の回復が遅いなかで、チュニジアはオリーブオイルの国際相場を安定させる秤の役割を担うとの期待を集めている。国際オリーブオイル価格は2024年にトン当たり1万ドル(約1450万ウォン)を突破し、史上最高値を記録した。その後も現在に至るまで、イタリア産オリーブオイルを基準にトン当たり9000ドルを上回る高水準を維持している。
農業専門家のファウジ・ザヤニはFTのインタビューで「今年はチュニジア農業史でゴールデンタイムとして記録されるだろう」と述べ、「国際市場でチュニジア固有の原産地保護名称(PDO)を強化し、現在10%未満の高価格なプレミアム瓶詰め製品の比率を30%以上に引き上げるべきだ」と語った。