サウジアラビア政府が福祉給付を縮小し、オンライン空間を中心に市民の不満が増幅している。これに対し当局がソーシャルメディア(SNS)アカウントの遮断、罰金刑や逮捕など超強硬対応に乗り出し、表現の自由が侵害されているとの批判が出ている。
29日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、サウジのメディア規制当局は12月、規定違反のコンテンツを投稿したとして9人にSNSアカウントの閉鎖と罰金刑を言い渡したという。現地報道によれば、規制当局は最近「挑発的コンテンツ」を投稿した疑いで40人を追加で召喚した状態だ。
当局は直前の11月にも、世論扇動情報を拡散した疑いで6人を逮捕するなど強力な制裁を科した経緯がある。これらの人物はサイバー犯罪処罰法に基づき、懲役5年または最大300万サウジリヤル(約11億4000万円)に達する罰金刑に処される見通しだとされる。
沸騰する批判世論の中心には、政府の社会保障制度の改編がある。サウジ人的資源社会開発省が最近、福祉手当の支給要件を大幅に見直し、これまでの受給対象だった市民が支援資格を失う事態となり、これをきっかけにオンライン空間で不満が急増しているということだ。
あわせて、10月に現職閣僚のいとこで金融財閥のヤジド・アラジヒが投稿した動画が不満世論に油を注いだとの分析もある。アラジヒはプライベートジェット機内で「私的な場であっても、統治者に対する否定的な発言を聞き流してはならない」と発言する動画を投稿し反感を買い、特権層への庶民の怒りが強まる引き金になったとの見方だ。
当局の制裁が過度に厳しい水準で行われ、報道に口止めをしているとの指摘も出ている。サウジの人権団体サナドは「規制機関が行政権限を検閲手段として悪用し、批判的な声を抑え込んでいる」と批判した。とりわけ制度改編への不満が広がった直後に大規模な取り締まりが行われた点で、政府に反する意見を抑圧しようとする意図が色濃いということだ。
実際、規制当局は具体的にどのような発言やコンテンツが取り締まりの直接的なきっかけになったのかを明らかにしていない。サルマン・アルドサリ情報相は「表現の自由を悪用してメディア・オンライン空間で混乱を醸成しようとする試みは決して容認しない」と述べ、今回の措置は報道弾圧ではないとの立場だ。
これを巡り、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がこの約10年進めてきた改革路線の二重性が露呈したとの批判も出ている。サウジ政府は公演・映画・スポーツなど大衆文化分野で規制を徐々に緩和する一方、最近は一部の政治犯を釈放するなど自律的な社会雰囲気の醸成に力を入れてきたが、権力構造への公然たる批判には依然として社会的寛容がほとんど働いていないという指摘だ。
米トゥレーン大学のアンドルー・レバー教授は「過去にも生活費や失業問題への不平は社会的に大方容認される雰囲気だった」としつつ、「最近のサウジ当局はどこまでが限界線なのかを明確に規定しようとしているようだ」と語った。