国際牛肉価格が中長期的に上昇するとの見方が出ている。豊富な牛飼育基盤を土台に供給量を支えてきたブラジルが供給縮小段階に入ったうえ、米国、豪州など主要生産国も供給量を絞っているためである。
29日付のブルームバーグによると、世界の牛肉市場全般で価格上昇圧力が広がっている。牛肉供給の中核であるブラジルがと畜頭数を減らし、未経産牛(まだ子牛を産んでいない若い雌牛)をいったん確保して飼養頭数の回復を図る動きを見せているためである。未経産牛の保有は牛肉供給縮小局面の狼煙と受け止められる。
これに先立ちブラジルは、過去2年間にわたり豊富な飼養頭数を背景に牛肉の生産と輸出を急速に拡大し、世界市場でのシェアを高めてきた。ブラジル国内の牛価格が米国、豪州に比べて低位にとどまったことで農家はと畜頭数を増やしてきたうえ、中国など主要輸入国は相対的に割安なブラジル産牛肉を大量に買い付け、依存度を大きく高めたためである。
ただし最近になって子牛価格が上昇し、ブラジルの状況が変わったとの評価が出ている。農業コンサルティング企業ダタグロは、来年のブラジルの牛と畜量が今年比5.3%減少すると予測したが、これは2年連続の増加から減少への転換を意味する。ラテンアメリカの投資銀行イタウBBAのカストル・アルベス責任者は「過剰供給の時代は幕を下ろしている」と述べ、「今後数年にわたり供給難が続く可能性がある」と見通した。
ブラジル以外の主要輸出国も引き締め局面に入っており、状況は一段と悪化する見通しだ。米国は干ばつで牧草地が減り、牛の供給量が急減している。世界2位の輸出国である豪州も、雌牛の保有拡大により全体の供給量が減少するとの見方が出ている。A7キャピタルのラファエル・ガルー研究員は「来年は主要牛肉生産国がそろって飼養頭数の回復に取り組むため、供給面で非常に重要な年になるとみられる」と語った。
農業金融に詳しいオランダのラボバンクは、来年のブラジルの牛肉生産量が5〜6%減少すると予想しつつ、輸出量は過去最大の440万トンに達すると見通した。とりわけ米国がブラジルからの輸入品に課していた40%の追加関税を撤廃したことで、牛肉輸出量はむしろ増加する可能性があるとの観測も出ている。
ブラジル食肉協会アブラフリゴのパウル・ムステファ専務理事は「供給が限られる一方で国際需要は依然として強く、来年の牛肉市場はかなりの強含みとなる」と説明した。