風力・太陽光などの環境配慮型エネルギーを積極的に拡大し、人工知能(AI)ブームに備えてきた英国が、老朽化した送配電網のため深刻な「電力ボトルネック」を抱えている。
28日(現地時間)、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は「英国は環境配慮型エネルギー導入を積極的に進めたが、送配電網がこれに耐えられない」という見出しの記事で「英国は広範な風力・太陽光発電所ネットワークを構築し、世界の主要国より再生可能エネルギー比率が高いが、このクリーンエネルギーを送るのに必要な送電線路は十分に整備していない」と指摘した。
英国の送配電網の大半は1960年代に構築された後、大規模なアップグレードを経ていない。ここに近年のAIデータセンター建設ブームで電力需要が指数関数的に増え、既存設備がこれに耐えられない状況だ。
とりわけ既存の送電網は急増している環境配慮型エネルギーの発電量を十分に吸収できていない。現在、風力エネルギーは英国全体の電力供給量の約3分の1を占め、電力システムの中核となっているが、送電網がこれを各家庭に適切に届けられていない。このため新たな風力発電所や蓄電池設備を建設する場合、送電網に接続されるまでに5〜10年かかるとされる。
英国の送電会社ナショナル・グリッドの最高戦略・規制責任者であるスティーブ・スミスは「スコットランド北部に最先端の風力発電所を建てても、そこまで結ぶ送配電網がなければどんな技術でも問題は解決できない」とし「結局は新しい送電線を建設しなければならない」と述べた。
WSJによると、スコットランド沿岸に集中する風力発電所は電力需要が大きいイングランド南部の都市と遠く離れており、常時稼働すれば送配電網の過負荷を招くリスクが大きい。このため英国政府は3月までの1年間、発電事業者に発電停止を要請し、約23億ドル(約3兆3000億ウォン)を支払った。こうした補償費用は今後さらに増える可能性が高いとされる。
英国も老朽化した送配電網の改善に乗り出しているが、これは電気料金の上昇に直結せざるを得ない点が新たな負担だ。ナショナル・グリッドは「ザ・グレート・グリッド・アップグレード(The Great Grid Upgrade)」プロジェクトの一環として、今後5年間で英国の送配電網の改善に約400億ドル(約57兆4000億ウォン)を投資する計画だと明らかにした。
現在の英国の平均世帯当たり年間電気料金は約1500ドル(約216万ウォン)で、2008年比で2倍以上に上昇した。電力使用量が3倍に達する米国(約1700ドル)と比べても高水準だ。巨額の送配電網アップグレード費用が料金に反映されれば、英国家計の負担は一段と増す見通しだ。
英国の送配電網が完全に近代化されるまでには道のりが長い。新たな送電線の建設だけでも最大10年を要し、このうち相当な時間が地域社会との協議や各種許認可手続きに費やされる。とりわけ送電塔建設をめぐり地域住民や自然保護団体の反発が強く、送配電網の拡充は容易でない状況だとWSJは伝えた。