世界の高級ワイン市場が3年連続で下落基調を続け、投資家の失望感が強まっている。トランプ政権の関税政策で米国の買い手が萎縮したうえ、投資資金が株式や金など他の資産に移動し、市場全体が打撃を受けたためだ。今回の売り圧力で高級ワイン価格は2020年末の水準に戻った。
25日(現地時間)、英国フィナンシャル・タイムズ(FT)がワイン取引所リブエックスの調査を引用して報じたところによると、高級ワイン市場の価格動向を示す代表指標であるファイン・ワイン100指数は今年11月末までに2.8%下落した。地域別では、フランス・ボルドーのワイン価格が6.6%下がり、ブルゴーニュは4.4%、ヴィンテージ・シャンパーニュは4.3%下落した。リブエックスの副会長兼取引所ディレクターであるジャスティン・ギブスは「今回の弱気相場は前回の下落期よりはるかに厳しかった」と評価した。
今回の下落は、新型コロナウイルスのパンデミック期間に形成されたバブルがはがれる過程との分析が出ている。新型コロナウイルス感染症(コロナ19)の時期に低金利と潤沢な流動性、余剰資金が高級ワイン価格を史上最高値に押し上げたが、現在はその上昇分がほぼすべて消えたとの評価だ。同期間に米国のテクノロジー株と金価格が急騰し、投資家の関心を引き付けたこともワイン市場に不利に働いた。
米国の関税政策も直撃した。トランプ大統領が欧州連合(EU)産の輸入品に15%の関税を課し、米国内の高級ワイン需要が急減した。リブエックスによると、今年の米国の買い手による高級ワインの購入額は約44%減少した。最大の消費市場の一つだった米国需要が鈍化し、グローバル市場全体への負担が増した。
ワインが瓶詰めされる前に先に購入する先行購入市場であるボルドーの「アン・プリムール」市場の不振も下落基調を深めた。生産者が新作ワインの価格を過度に高く設定し在庫が積み上がり、その後中古市場で価格が下がる事例が繰り返された。卸売業者や小売業者が依然として多くの在庫を抱えている点を認識した買い手が購入を先送りし、取引が縮小した。
とりわけボルドーの2021年ヴィンテージは不振な成績となった。著名な高級ワインであるシャトー・ムートン・ロスシルドの2021年ヴィンテージは今年5.2%下落し、シャトー・オー・ブリオンは11.4%下がった。サンテミリオンのシャトー・オーゾンヌ2021年ヴィンテージは34%急落した。評論家はこのヴィンテージを無難だが傑出してはいないと評価した。
ただし足元では回復の兆しも捉えられた。11月末までの直近3カ月間で高級ワイン価格が小幅に反発した。香港とシンガポールの商人は、中国経済の減速で萎縮していたアジア需要が徐々に戻りつつあると伝えた。香港のアルタヤ・ワインの創業者であるパウロ・フォンは、割安な価格を活用しようとする顧客が増えていると述べた。
シンガポールのアジア代表的な高級ワイン流通・投資企業であるヴィナム・ワインズは「ブルゴーニュの白ワインとヴィンテージ・シャンパーニュの需要が増加している」と明らかにした。中国の顧客の関心も再び高まっているとの評価が出ている。ワイン投資会社クルー・ワインのグレゴリー・スワートバーグは「最近の市場は不振だったが、同時に優良ワインを割安に買い付ける機会になった」と語った。スワートバーグは「収穫量が少ない2024年ヴィンテージの影響で白ワインの供給不足が見込まれる」とし、「2023年産のブルゴーニュ・ワインを集中的に買い付けた」と明らかにした。