カナダ自由党政権が難民を標的にした大規模な移民・国境関連法案を推進し、米国型の国境政策に近づいているとの懸念が高まっている。新法案が外国人嫌悪をあおり、難民と移民を政治的なスケープゴートにしかねないとの批判が出ている。
23日(現地時間)の英ガーディアンによると、問題の法案はいわゆる「C-12法案」で、正式名称はカナダ移民システム及び国境強化法である。法案には国境警備強化を名目に難民申請資格を制限し、行政権限を大幅に拡大する条項が盛り込まれた。法案は迅速処理され、11日に下院の最終採決段階である第3読会を通過しており、来年2月に上院の承認を経れば法律として確定する予定だ。
法曹界と学界では、この法案が難民保護体制を根本的に弱体化させると評価した。イディル・アタク・トロントメトロポリタン大学の難民・人権法教授は、この法案が難民保護の観点から極めて退行的な措置だと指摘した。アタク教授は「政府機関間の難民情報共有の拡大と、移民手続きを統制・取り消すことができる行政権限が前例なく強化された」と述べた。
この法案の核心争点の一つは、亡命申請の時点に対する制限である。申請者がカナダ入国後1年を過ぎて亡命を申請する場合、従来のように移民難民委員会ではなく、移民担当官が実施する送還前危険評価に付託するようにした。法律専門家らは、この手続きは一人の担当官の判断に左右され、棄却率が非常に高いと指摘した。
もう一つの論点は、米国との陸路国境で受け付けられた亡命申請を14日以降は審査対象から除外する条項である。これは米国を「安全な第三国」とみなす既存の協定を前提とするものだ。しかし専門家らは、米国が難民保護を保証する安全な国家とは言い難いと主張した。最近、米国内で移民取り締まりの強化と迅速送還の事例が増え、難民にとって危険な環境が形成されたとの指摘が出ている。
この法案は、最近のカナダにおける送還増加の流れとも重なっている。カナダは昨年約1万8000人を送還しており、これは過去の保守党政権期以降で最も高い水準である。送還関連費用も大きく増え、政府の強硬姿勢が数値で裏付けられたとの評価が出た。
移民の権利団体は、今回の法案が物価上昇や住宅難など国内問題の責任を移民に転嫁する政治的レトリックと結びついていると批判した。一部の専門家は、自由党政権が米国との通商交渉と関係改善を意識し、国境統制を強化しようとするシグナルだと解釈した。
一部では、この法案がカナダが長年維持してきた「難民を歓迎する国家」というイメージを損なう恐れがあると警告した。難民保護は国際条約に基づく法的・道徳的義務であり、これを弱める措置はカナダの価値とアイデンティティーに対する根本的な問いを投げかけるとの指摘だ。