ドナルド・トランプ米大統領がジェフ・ランドリー・ルイジアナ州知事をグリーンランド特使に起用し、ワシントンでは当惑の声が出ている。ランドリー州知事は共和党内でも強硬な保守派で、典型的な「トランプ忠誠派」に分類される。一方で、外交・安保分野では事実上ほとんど経験がないとされる。
21日(現地時間)、トランプ大統領はソーシャルメディアを通じてランドリーをグリーンランド特使に任命すると発表した。大統領は「ランドリー州知事はグリーンランドが米国の国家安全保障にどれほど重要かをよく理解している」と述べ、起用理由を明らかにし、ランドリーは「グリーンランドを米国の一部にするために奉仕できて光栄だ」と即座に応じた。ランドリーのルイジアナ州知事職はそのまま維持され、特使としての正確な役割と権限はまだ明確に公表されていない。
ジェフ・ランドリーは2023年に当選したルイジアナ州知事で、知事就任前は2016年から8年間ルイジアナ州法務長官を務めた。在任中、バイデン政権の政策を相手に攻撃的な訴訟を仕掛けて存在感を高め、コロナ禍当時に従業員100人以上の事業場の雇用主が労働者にワクチン接種を義務付けられるようにした規則を「基本権侵害」だとして提訴した例が代表的だ。
ランドリーは、米国内で最も厳格な水準と評価されるルイジアナ州の中絶禁止法を積極的に擁護してきた人物でもある。先に2020年、連邦最高裁が中絶手術を行える資格要件を厳しく制限したルイジアナ州の「安全ではない中絶防止法」に違憲判決を下すと、ランドリーは声明で「産婦と胎児の健康と安全よりも中絶へのアクセスを優先する痛ましい決定を下した」として公然と批判した。
とりわけジェフ・ランドリーはトランプ大統領の政策路線を全面支持してきた親トランプ人脈だ。不法滞在者の取り締まりを理由にルイジアナ州ニューオーリンズへの州兵投入を直接要請し、大統領のグリーンランド編入構想にも賛成の立場を堅持してきた。1月にはX(旧ツイッター)で「トランプ大統領は絶対に正しい」とし、「グリーンランドが米国に合流することは彼らにとっても、我々にとっても良い」と主張しており、高い忠誠度が今回の特使指名の決定的要因になったという見方が出ている。
ただし地域特使としてのランドリーの外交的資質には疑問が出ている。ランドリーは関連経験が事実上皆無で、知事在任中は州の保守化政策の執行に専念してきたためだ。他方でトランプ大統領はこれまでウクライナ特使や中東特使にも最側近を全面起用してきた経緯があり、今回の人選も専門性より忠誠度を優先したとの分析がある。
グリーンランド側は冷淡な反応を示している。メッテ・フレデリクセン・デンマーク首相とイェンス・フレデリク・ニルセン・グリーンランド首相は共同声明で主権尊重を求め、ラーズ・ローケ・ラスムセン・デンマーク外相も「米国の決定は全く受け入れられない」と線を引いた。デンマーク議会で活動するグリーンランド出身のアヤ・ケムニツ議員は「ランドリーの訪問を歓迎する」としつつも「グリーンランドは売買の対象ではない」と一蹴した。