ドナルド・トランプ米国大統領がグリーンランド特使を任命してデンマークの主権を脅かすと、デンマーク政府は直ちに米国大使を呼びつけ、強い外交抗議に乗り出した。同盟国間の領土紛争が北極圏の地政学的危機へ拡大する様相だ。
トランプ大統領は21日（現地時間）、ソーシャルメディアでジェフ・ランドリー・ルイジアナ州知事をグリーンランド特使に起用したと発表した。トランプ大統領は「ランドリー州知事は、グリーンランドが米国の国家安全保障にいかに重要かをよく理解している」とし「米国の利益と世界的繁栄に大きな役割を果たすだろう」と明らかにした。
ランドリー州知事は即座に応じた。ランドリー州知事はX（旧ツイッター）に「グリーンランドを米国の一部にするために奉仕できて光栄だ」と書いた。これは特使の任務が単なる外交支援を超え、グリーンランドを米国領に編入する意思を公式化した発言と解釈される。
デンマークは即座に反発した。メッテ・フレデリクセン・デンマーク首相とイェンス・フレデリク・ニルセン・グリーンランド首相は共同声明を出し、主権尊重を求めた。両者は声明で「国境と主権は国際法に基づく根本的原則だ」とし「国際安全保障を名分に他国を併合することはできない」と釘を刺した。ニルセン・グリーンランド首相はフェイスブックを通じて「グリーンランドはグリーンランドであり、領土保全は必ず尊重されなければならない」と付け加えた。
外交的対応も続いた。ラース・レッケ・ラスムセン・デンマーク外相は「米国の決定は全く受け入れられない」と述べ、駐在米国大使を召喚して説明を求めると明らかにした。デンマーク政府は今回の任命が事前協議なしに一方的に進められた点に困惑を隠せないでいる。
専門家は今回の措置を、トランプ大統領のグリーンランド買収の意思が実行段階に入ったシグナルとみる。ミケル・ルンゲ・オレセン・デンマーク国際学研究所上級研究員は「特定の国家や地域だけを対象とする特使任命は珍しい」とし「グリーンランドへの統制力を確保しようとする高度な戦略的エスカレーション（段階的拡大）だ」と分析した。
グリーンランドはデンマークの自治領で、2009年の自治政府法に基づき外交と国防を除く広範な自治権を行使している。トランプ大統領は任期初期からグリーンランドに埋蔵された豊富な天然資源と地政学的価値に注目してきた。年初にJD・バンス副大統領がグリーンランドの米軍基地を訪れ、デンマークが安保投資に消極的だと批判したのも同じ文脈での発言と解釈される。
デンマーク情報当局は、米国側の圧力が単なる外交的レトリックを超えたと警告した。デンマーク国防情報局は最近の報告書で「米国が同盟国に対しても経済的手段と軍事的威嚇を動員して意志を貫徹しようとしている」と指摘した。欧州連合（EU）もデンマークの立場を支持し「領土保全と国境不可侵性は欧州安全保障の核心だ」との立場を示した。
グリーンランドをめぐる対立は、米国と北欧の同盟間の信頼関係を試す局面に乗せている。トランプ政権が特使を前面に併合主張を継続する場合、北極圏の安全保障地図はもとより、NATO（北大西洋条約機構）の内部結束にも相当な波紋が予想される。