米国政府が中国を含む海外ドローン各社に対し、事実上の市場撤退に等しい強力な制裁カードを切った。
連邦通信委員会(FCC)が国家安全保障上の脅威を理由に、外国製ドローンと中核部品をセキュリティ懸念リストに追加したことで、今後は中国のDJIをはじめとする主要海外ブランドの新型モデルは米国市場に上陸しづらくなる見通しだ。今回の措置は単なる輸入規制にとどまらず、米国内のドローン産業の主導権を完全に奪還するというトランプ政権の強い意思が反映された結果とみられる。
22日(現地時間)、米連邦通信委員会(FCC)公共安全・国土安全局(PSHSB)は、海外で生産された無人航空機システム(UAS)と中核部品をセキュリティ懸念リストに追加すると発表した。今回の決定はホワイトハウス主導の関係省庁合同レビューの結果に基づく措置である。
この措置により、ドローン分野で世界1位の中国DJIやオーテル(Autel)ロボティクスといった海外主要ドローンメーカーが投入する新製品は、米国市場参入の必須関門であるFCCの機器認証を受けられなくなった。米国内で無線機器を輸入または販売、マーケティングするには必ずFCC認証を経なければならない。事実上、外国製の新型モデルに対する輸入禁止令を出した格好だ。
すでにFCC認証を取得して市中に流通している既存モデルや、消費者がすでに購入し使用中のドローンは今回の措置の対象外である。FCCは「既に適法に購入したドローンを継続して使用することは認め、既に認証済みモデルの流通も直ちには停止しない」と説明した。
トランプ大統領は今回の措置の背景として「米国領空の主権回復」と「米国のドローン支配力強化」を掲げた。ホワイトハウスはこの日の大統領令で「ドローンは公共の安全とイノベーションを促進する潜在力が大きい一方で、同時に敵対的な国家やテロリストがこれを利用して米国本土に深刻な脅威を与える可能性がある」と警告した。
とりわけ来年は2026年FIFAワールドカップ、米国独立250周年記念行事、2028年ロサンゼルス夏季五輪など大規模な国際イベントが相次いで開かれる。これを前に安保体制を再整備する布石である。FCCは「外国製ドローンが攻撃や妨害、無断監視、機微なデータ流出などに悪用される懸念が大きい」と指摘した。
経済的な目的も明確だ。トランプ政権は外国製ドローンに過度に依存する現行の構図が米国ドローン産業の基盤を弱体化させると判断した。このため単純な規制ではなく、ドローン関連のサプライチェーンを米国中心に再編し、現在中国が主導するドローン市場を米国内生産・部品自立へ誘導する大統領令を出したと専門家は分析する。
今回の規制は対象範囲を完成品にとどめず、ドローンに搭載される中核部品まで大幅に広げた。それだけに過去の単純な規制より波及力が大きいと評価される。FCCは中核部品リストにデータ伝送装置、通信システム、フライトコントローラー(FC)、地上管制局(GCS)、ナビゲーションシステムなどをすべて含めた。
これに加えて、センサーやカメラ、バッテリー管理システム(BMS)を含むバッテリー、モーターとそれを制御するソフトウェアまで規制網に入った。事実上、ドローンに搭載されるほぼすべての部品を網羅する。海外で生産した部品を持ち込み米国内で組み立てても、認証取得が厳しくなる可能性があるとの見方が出ている。
このリストに載った品目は今回の大統領令の施行以降、すべて輸入が遮断される。遮断を解除するには国防総省(DoD)や国土安全保障省(DHS)が「特定の製品や部品が安保リスクを生じさせない」と別途判断し、FCCに通知しなければならない。これは米国政府がドローンのサプライチェーン全体を統制するという強力なシグナルである。
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)所属のジェームズ・ルイス上級副所長は「ドローンは単なる飛行体ではなく、データを収集する空飛ぶコンピューターだ」と述べ、「敵対国家が運用するネットワークにこのような装置が接続されるのは、明白なセキュリティの脆弱性を露呈する行為だ」とした。
世界ドローン市場の約70%を占める首位企業の中国DJIは、今回の措置で直撃弾を受けた。DJIはこれまで米国内の公共機関や写真家、ホビー用途のユーザーの間で圧倒的なシェアを記録してきた。しかし新製品の投入が滞れば、自然と市場シェアは低下する見通しだ。
専門家は今回の措置が、グローバルなドローン産業の標準とサプライチェーンを「米国中心」と「中国中心」に完全に二分する契機になるとみる。米国のドローン市場は今後、「米国産」もしくは「同盟国産」中心に迅速に再編される可能性が大きい。スカイディオ(Skydio)のような米国現地のドローン企業が最大の反射利益を得る見込みだ。
ドローン専門メディアのインサイドアンマンドシステムズは専門家の談話を引用し、「米国市場はもはや単に飛行性能を誇示する場ではなく、どれだけ安全なソフトウェアスタックを備えているかを証明しなければならない場になった」とし、「米国のドローン関連企業はハードウェアの国産化を超えて、データセキュリティ体制の高度化に社運を懸けるべきだ」と提言した。