米国がベネズエラを往来するタンカーを事実上封鎖し、ベネズエラに経済的に大きく依存してきたキューバが直撃弾を受けるとの見方が出ている。
21日(現地時間)、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「共産主義政権が統治するキューバはすでに食料不足と度重なる停電、人口流出に苦しんでいた」とし「いまや状況はさらに悪化する可能性が大きい」と伝えた。先立ってロイター通信も「ベネズエラ産原油はキューバの電力網を支える中核の供給源だ」とし「米国の今回の措置は、すでに石油不足で苦境にあるキューバの立場を一段と悪化させる」と報じた。
キューバの経済的打撃は、米国がベネズエラの石油輸送を締め付け始めて本格化した。ドナルド・トランプ米政権はベネズエラ政府を圧迫するため10日から制裁対象のタンカーを拿捕している。これらのタンカーはベネズエラ原油輸出量のおよそ70%を担ってきた。米沿岸警備隊はこの日もベネズエラ近海で制裁対象のタンカー1隻を拿捕し、これによりベネズエラの石油サプライチェーンが事実上崩壊しているとの評価が出ている。
キューバは1999年、当時のウーゴ・チャベス・ベネズエラ大統領が両国は「幸福の海で結ばれている」と宣言して以降、ベネズエラに経済的に大きく依存してきた。キューバはチャベス政権時代、反体制派を摘発するための防諜要員などをベネズエラに派遣し、ベネズエラはキューバに日量10万バレルの石油を供給することで応えた。現在は輸入量が減ったものの、依然としてキューバが輸入する石油のおよそ40%はベネズエラ産である。
ベネズエラ産原油はキューバの発電所と交通、零細自営業部門に不可欠だとWSJは伝えた。ベネズエラ国営石油会社PDVSAによると、ベネズエラは今年1月から11月までキューバに日量平均2万7,000バレルの原油と燃料を輸出したが、これは前年同期間の日量平均3万2,000バレルより16%減少した水準だ。アメリカン大学のキューバ経済学者リカルド・トレス・ペレスは「今後数週または数カ月の間に船積み量が引き続き減少するなら、キューバはこれ以上持ちこたえにくくなる」と述べた。
ましてやキューバ経済はすでに大きく揺らいでいた。シンクタンクの社会権利監視所の調査によると、キューバ人口のほぼ90%が極度の貧困下で暮らしており、70%は1日に少なくとも1食以上を抜いた経験があることが分かった。地域によっては1日18時間以上の停電が続くこともあった。これにより2020年以降、キューバ人口の約4分の1に当たる270万人がキューバを離れた。
テキサス大学オースティン校でキューバとベネズエラのエネルギー関係を研究するキューバ出身の亡命者ホルヘ・ピニョンは、ベネズエラ産石油の輸送が停止または急減する場合「疑う余地なくキューバ経済の崩壊につながる」と警告した。
キューバ政権も米国に不快感を示している。ミゲル・ディアスカネル・キューバ大統領は最近の共産党中央委員会で「ドナルド・トランプはまるで下品な泥棒のようにベネズエラのタンカーを海賊のように襲撃し、貨物を厚かましく強奪した」とし「敵の規則は規則がないということだ」と批判した。
先にキューバ外務省も、米国がタンカー『スキッパー号』を拿捕した10日に声明を出し、「海賊行為であり海上テロだ」とし、「ベネズエラが自国の天然資源を自由に使用し、他国と取引する正当な権利、特にキューバに向かう炭化水素の供給を妨害しようとする米国の強化された圧迫の一環だ」と批判した。続けて米国の措置が「キューバに否定的な影響を及ぼす」とした。