米国のある判事がイーロン・マスク、テスラ最高経営責任者（CEO）をめぐる訴訟の処理過程で、人工知能（AI）によって判例を誤って引用した疑いが浮上した。この判事はマスクCEOに有利な判断を下した経緯がある。
20日（現地時間）のサンフランシスコ・クロニクルによると、マスクが名誉を毀損し証券詐欺を働いたとして訴訟を提起したアーロン・グリーンスパンは、ジョセフ・クイン判事の最近の命令書にAIの誤りとみられる内容が見つかったと主張した。
グリーンスパンはテスラ株を空売りしていた投資家で、テスラが掲げてきた「完全自動運転」（FSD）は誇張だと批判したところ、マスクが陰謀論者だと指摘したため訴訟を起こした。
これに対しマスクは、表現の自由を抑圧する訴訟に対して早期却下を求めることができるカリフォルニア州法上の制度を活用し、却下申立書を提出した経緯がある。
これに対してグリーンスパンは、マスクが法廷の期限である60日を過ぎて申請書を出したと指摘したが、クイン判事は提出日を遡及適用できるという上級裁判所の判例を引用してグリーンスパンの請求の大半を棄却した。訴訟費用もグリーンスパンの負担とした。
問題は、クイン判事が引用した判例が誤っていた点である。提出日を遡及できるという部分は裁判官の判断ではなく被告側の主張であり、最終判断で退けられた内容だったことが判明した。
これについて法律専門紙「アバブ・ザ・ロー」は、「幻覚（hallucination）」と呼ばれる典型的なAIの誤りが発生し、判事がこれを検討なしに引用したようだと指摘した。
結局クイン判事は既存の命令書を手書きで修正して書き直したが、命令自体はそのまま維持したとされる。
サンフランシスコの裁判所によると、裁判官によるAIの使用は許容されるが、判例は最終的に必ず人間が検討しなければならない。