ウィドコフを通じプーチンが対米影響力を拡大

外交経験が皆無の不動産開発業者スティーブ・ウィドコフがドナルド・トランプ米国大統領の特使として影響力を強めた背景に、ウラジーミル・プーチン露大統領の綿密な計算があったという報道が出た。

19日（現地時間）のウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）によると、ウィドコフはトランプ第2期政権発足後に中東特使へ任命されるやいなや、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子からプーチン大統領が会いたがっているとのメッセージを伝えられた。会談が実現すれば、ロシアに収監中の米国人受刑者の釈放もあり得るとの提案を受けたという。

ただし会談の条件は、中央情報局（CIA）担当者も、外交官も、通訳も同席させず、単独で来ることだった。これを受け、ウィドコフは実際にモスクワでプーチン大統領と単独会談し、2月に米国人受刑者マーク・フォーゲルを連れ帰った。これを機にウィドコフの地位は大きく強化された。

WSJは、プーチン大統領がトランプ周辺人物の「心理プロファイル」まで分析して接触対象を選別したと伝えた。例えば、当時ウクライナ特使に指名されていたキース・ケロッグ元中将の場合、娘がウクライナ関連の慈善団体を運営していたため「非友好的人物」と分類されたという。

このためケロッグはウクライナ問題で立場を失い、ウィドコフはトランプ大統領の長女婿であるジャレッド・クシュナーとともに国境問題から対ロ制裁解除の時期に至るまでを議論する中核人物へと浮上した。職業外交官ではない事業家が停戦関連の議論に深く関与するのは前例のない事案と評価される。

実際、最近の6度目のロシア訪問では、ウィドコフはプーチン大統領と深夜まで5時間を超えて会談した一方で、ウクライナにはこれまで一度も訪れていない。