最近、ドナルド・トランプ米大統領がベネズエラへの圧力を強めているものの、圧力の名分がその都度変わるため、米国の政界では混乱が広がっている。19日（現地時間）、ウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）は「一部の側近は、トランプ大統領がベネズエラの政権交代を公に支持することには消極的だが、最終的な目標が何であるのか確信していない」と報じた。
今月に入り、米国とベネズエラの対立は一段と高まっている。トランプ大統領は16日、ニコラス・マドゥロ政権を外国テロ組織に指定したのに続き、ベネズエラと往来する制裁対象のタンカーに対する「全面封鎖」を命じた。トランプ大統領はこうした措置を指示し、「敵対的な政権が米国の石油や領土を占有することは容認できず、すべては直ちに返還されなければならない」と主張した。
さかのぼって9月、米国がカリブ海で麻薬密輸が疑われる船舶を攻撃した当時は、トランプ政権はこれをベネズエラのギャング構成員を米国領土から排除するための作戦だと説明していた。当時トランプ大統領はベネズエラのギャング「トレン・デ・アラグア」に言及し、「トレン・デ・アラグアの組織員を米国に送り込むのも、米国に麻薬を持ち込むのもやめろ」と促した。初期にはギャングと麻薬取り締まりを圧力の名分として掲げていた格好だ。
当時、トランプ大統領がマドゥロ政権の交代を目標としているのではないかとの観測が出ると、トランプ大統領はこれを否定した。ベネズエラの政権交代を望んでいるのかとの質問に対し、トランプ大統領は「われわれはその話をしていない」と線を引いたことがある。
しかし最近では政権交代を示唆するような発言を出している。先月、トランプ大統領はマドゥロ大統領との電話会談で、マドゥロ大統領が自発的に権力を手放さない場合、米国が武力行使を検討し得ると警告した。また10日、CNNはトランプ政権がマドゥロ大統領が追放された場合に備え、密かにフォローアップ計画を立てていると報じた。
トランプ大統領の側近であるスージー・ワイルズ大統領首席補佐官も、16日発行のヴァニティ・フェアのインタビューで、トランプ大統領の目標はマドゥロを権座から追放することだと明らかにした。ワイルズ首席補佐官はインタビューで「（トランプ大統領は）マドゥロが降伏するまで船を沈め続けたいと考えている」と述べた。
ただしトランプ政権が最近のベネズエラへの圧力の目標がマドゥロ政権の追放だと公式に明らかにしたことはない。WSJによると、専門家はこれについて、トランプ大統領の外交政策が即興的に展開されるうえ、外国政府の転覆を試みることは、トランプ大統領が長らく批判してきた海外紛争への関与につながり得るためだと分析している。
トランプ大統領のベネズエラ圧力の名分が不明瞭なため、米国の政界も混乱した雰囲気だ。米下院軍事委員会と情報委員会に所属する民主党のジェイソン・クロウ下院議員（コロラド）は「（行政府に）一貫した戦略があるなら、議会は明確にそれを聞いていないはずだ」とし、「最終目標が見えない」と指摘した。
共和党所属のリンジー・グラハム上院議員（サウスカロライナ）も、16日にマルコ・ルビオ国務長官とピート・ヘグセス国防長官の非公開ブリーフィングの後、行政府のベネズエラ政策が「混乱している」と批判し、「今後何が起きるのか知りたい。マドゥロを倒すことが政策なのか。もしそうでないなら、そうなるべきだ」と述べた。
WSJは「一部の当局者は、行政府内部の議論で圧力キャンペーンの複数の根拠が同時に言及されているが、ホワイトハウスがマドゥロ政権を追放するための戦争を準備しているのかは確信していない」とし、「トランプ政権が最近とったベネズエラの石油出荷に対する措置も、トランプ大統領の戦術と目標をめぐる疑問を強めている」と伝えた。