英国の労働党政権が労働者の権利を大幅に強化する新たな雇用法の制定を事実上確定した。労組権限の強化や不当解雇の要件緩和など労働寄りの条項が多数盛り込まれ、経済界と労働界の明暗が鮮明に分かれている。
17日(現地時間)フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、労働者の権利拡大を骨子とする与党労働党の雇用権利法(Employment Rights Bill)がこの日、長期の膠着の末に英国上院を最終通過した。法案は国王の裁可のみを残しており、2027年から施行される見通しだ。
ピーター・カイル通商相は声明で「数カ月にわたる議会での議論が大詰めを迎えた」とし、「旧来の英国の雇用法を21世紀にふさわしく改革し、数百万人の労働者に尊厳と尊重を提供する」と明らかにした。
法案には、▲不当解雇主張の要件緩和▲労組権限の強化▲搾取的な就労契約の禁止など、キア・スターマー政権が総選挙の公約以来推進してきた看板政策が幅広く含まれた。政府はこれにより、新型コロナ後に広がった不安定な雇用構造を正す立場だ。
今回の措置で、不当解雇訴訟を提起できる勤続要件は2年から6カ月に短縮される。当初、政府はこれを就業初日から適用する条項を推進したが、企業の反発を考慮し6カ月に緩和する案を採用したとされる。法定病欠手当は3日の待機期間なしに欠勤初日から支給され、父親休暇と無給の育児休業も入社初日から保障される。
労組権限も大幅に強化される。ストライキ宣言のための組合員賛成率の基準が緩和され、ストやその他の団体行動への参加を理由に労働者を解雇することも制限される。組合員の基金拠出の方式も「明示的同意」方式から「自動同意」方式へと転換される。
「搾取的」ゼロアワー契約(zero-hours contracts)も厳格に禁止され、これは低時間就労の契約を結んだ労働者に「定期的な勤務パターンを反映した契約」を要求する権利を付与する。ただし、低時間就労の基準や一部業種における定期勤務の算定方式は未定であり、政府は今後の追加協議を通じて施行令を整備する計画だ。
政策の見通しをめぐる評価は割れている。英国最大の労組団体である労働組合会議(TUC)は、今回の改革で年間103億ポンド(約20兆4537億ウォン)の生産増効果が生じると主張する一方、保守系シンクタンクの独立成長委員会は、年間76億ポンド(約15兆911億ウォン)の経済損失は避けられないと見通した。
企業は激しく反発している。英国産業連盟(CBI)・中小企業連盟(FSB)・英国商工会議所(BCC)など主要経済団体は「雇用創出と産業成長にリスクとなり得る」とし「現実的な合意が必要だ」と主張した。実際、関連する政府調査によれば、今回の政策により経済界では年間約45億〜50億ポンド規模の追加コストが発生する見通しだ。
野党も直ちに反発に動いた。保守党はこの日、声明で「(新雇用法は)雇用を減らし企業活動を萎縮させる有害な法案だ」とし、「政権交代時には一部条項を巻き戻す」と警告した。
一方、労働界は法案制定を強く歓迎する雰囲気だ。ポール・ノワックTUC事務局長は「全国の労働者に贈る早めのクリスマスプレゼントだ」とし、「不安定雇用と脆弱な権利、低賃金へとつながった数十年の経済構造を変える転換点だ」と評価した。