トランプ大統領が映画監督ロブ・ライナーの殺害報道をめぐり嘲弄するメッセージを公開し、保守陣営内部で予想外の反発を招いた。ライナーは長年にわたりトランプ政権と共和党を強く批判してきた代表的なリベラル系人物だった。しかし、訃報が伝わった直後にトランプ大統領が「トランプ狂症候群の犠牲者」と表現して茶化すと、これまでトランプを擁護してきた「マガ(MAGA・Make America Great Again)」支持層内部でも「政治と無関係な家族の悲劇には例外を設けるべきだ」という批判が出た。ライナーと妻のミシェル・ライナーは最近ロサンゼルスの自宅で死亡した状態で発見され、息子のニックが殺人容疑で逮捕された。
15日(現地時間)アクシオスによると、事件当初はマガ関係者が比較的抑制的な反応を示した。9月のチャーリー・カーク暗殺事件で左派支持者が見せた嘲笑に強く反発した経験があったため、今回は「相手陣営の死を祝わない」という基調が共有されたためである。一部の保守系論客は当時の反応を想起し、「左派と違い、われわれは品位を守る」と強調した。
しかしトランプ大統領が翌朝、ソーシャルメディア(SNS)にライナーを嘲弄する長文を残し、流れが急変した。トランプ大統領は、ライナーが「トランプ政権の成功に執着するあまり他者に怒りをまき散らした人物」だと主張し、これを精神疾患的な執着として描写した。
トランプ大統領のメッセージは共和党の中核議員の間でも公然たる不快感を生んだ。連邦下院議員のマジョリー・テイラー・グリーンは「一家が悲劇に直面している状況で、これを政治的攻撃の材料にするのは極めて不適切だった」と述べた。グリーン議員はトランプに近い強硬派と分類されるが、今回ばかりは「ライナーの政治的立場とは別に、人間的な悲劇は尊重すべきだった」と一線を画した。トランプ大統領の元弁護士ジェナ・エリスも「2度の暗殺未遂を経験した大統領であれば、この種の事件にはより慎重に対応すべきだった」と批判した。共和党内部でトランプに対する公開の叱責が出るのはまれだ。
それでも一部のマガ支持者はトランプを積極的に擁護した。彼らはライナーがこの10年余りトランプを攻撃してきた代表的な人物だった点を強調し、「相手が先に政治的攻撃を続けてきた以上、トランプが礼儀を守る理由はない」と主張した。保守系コラムニストのカート・シュリヒターは「過去10年、絶えずトランプを攻撃してきた人物だった。トランプが十分に丁重でなかったと彼を非難するのは偽善だ」と擁護した。
しかし今回の論争が、マガ陣営の道徳的優位戦略に打撃を与えるとの分析も出た。マガは保守活動家チャーリー・カーク暗殺事件以降、左派陣営が政治的暴力を嘲笑または扇動する文化を批判し、攻勢を強めてきた。トランプ政権は、カークの死を祝ったとの疑いを受けた非米国市民のビザを取り消すという強硬措置まで取った。こうした流れの中で、トランプ大統領の嘲弄的な反応は「ダブルスタンダード」という逆襲を招きかねないとの懸念が出た。
政治評論家は、今回の事件が共和党内部でトランプ大統領の発言スタイルに対する疲労感が再び蓄積する契機となる可能性もあると指摘した。トランプ大統領は依然として忠誠度の高い支持層を抱えているが、より広がった共和党連合を一つに束ねるには、悲劇的事件への対応のトーン調整が必要だということだ。
ライナー夫妻の死亡事件は現在捜査中であり、これに対するトランプ大統領の嘲弄は今後の大統領選局面でも論争が続くとみられるとアクシオスは展望した。