欧州バルカン半島の国家であるセルビアの首都ベオグラードで進められていたドナルド・トランプ米国大統領一族による大規模複合団地建設計画が突如中断された。与党が特別法まで通過させて当該用地の文化遺跡の地位を剥奪した点が論争となった。
15日(現地時間)のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、トランプ大統領の長女婿ジャレッド・クシュナーが運営するプライベート・エクイティであるアフィニティ・パートナーズはこの日「意義のあるプロジェクトは分裂ではなく統合をもたらすべきだ」とし、「セルビア国民とベオグラード市に対する敬意の意味で今回の事業申請を撤回し、当面は手を引くことに決めた」と明らかにした。
先立ってこの日、セルビア検察は北大西洋条約機構(NATO)の爆撃を受けたベオグラード中心部にトランプ一族が3棟の高層ビルを建設しようとした計画に関連して、ニコラ・セラコビッチ文化相と関係公務員3人を起訴したと発表した。これを受けてアフィニティ・パートナーズが2年超にわたり推進してきたプロジェクトの終了を発表するに至った。
アフィニティ・パートナーズはベオグラードの遺跡である旧軍参謀本部団地一帯を開発し、トランプ・ホテルとアパート、オフィス、商業施設などを含む5億ドル(約7349億ウォン)規模の複合団地を造成する計画を進めてきた。1965年に完成した軍参謀本部はNATOの爆撃で破壊された後、現在まで廃墟として残っており、セルビア現代史の惨状を示す象徴的な場所と評価されて2006年に国家文化遺産に指定された。
WSJは「歴史的にはモスクワに近かったが西欧とも多くの連携を結んできたこのバルカン国家は、国内で唯一の製油施設に対する制裁解除など、トランプ政権から得たいものが少なくなかった」と伝えた。西側と対立姿勢を取ってきたセルビアがこのプロジェクトを機に米国との関係改善を推進したという分析である。
問題は先月、セルビア与党がクシュナーの事業を支援するために当該遺跡の文化遺産の地位を剥奪する特別法を通過させながら噴出した。この過程で重要文書が偽造された状況が露見し、検察はニコラ・セラコビッチ文化相をはじめ、スラビツァ・イェラチャ文化相秘書、ゴラン・バシチ共和国文化財保護研究所所長職務代行、アレクサンダル・イバノビッチ・ベオグラード市文化財保護研究所所長職務代行らを起訴した。
クシュナーが事業を放棄した背景には、セルビア政府関係者の起訴だけでなく国際社会の批判が強まった点も影響したとみられる。トランプ一族の複合団地建設計画の知らせが伝わった以後、バルカン戦争当時のNATO司令官であったウェズリー・クラークらが公開の場で批判に乗り出し、欧州議会も報告書を通じて「セルビアで文化遺産保護に対する政治的干渉が増加していることに深刻な懸念を表する」と述べた。
セラコビッチ長官はインフォマーTVとのインタビューで「裁判を待っている」とし、「真の標的は自分ではなくアレクサンダル・ブチッチ大統領であるため、嫌疑と闘いたい」と語った。セラコビッチ長官はブチッチ大統領の側近と分類される。
セルビアのプロジェクトは頓挫したが、バルカン半島でのトランプ大統領一族の不動産事業は続く予定である。アフィニティはアルバニア沿岸の放置された軍事施設用地をホテルと住宅施設が結合した複合団地として開発する計画だ。ルーマニアでも高級不動産開発会社がブカレストでトランプ・ブランドを使用するプロジェクトを推進中である。