スティーブン・ミラン米連邦準備制度理事が、米国中央銀行の金利決定プロセスが「仮想インフレ」によって揺さぶられていると主張した。実際より膨らんだ物価指標がFRBの金融政策判断を歪め、金利を必要以上に高く維持させたと述べた。ミランはトランプ大統領に近い人物として知られ、最近はFRB内部の慎重論に強く反旗を翻し、利下げペースを速めるべきだと主張してきた。
15日（現地時間）、英フィナンシャル・タイムズ（FT）によると、ミランはコロンビア大学国際公共政策大学院での講演で「FRBは根本的なインフレ圧力をより精緻に見極めるべきだ」と強調した。住宅費や推定価格など統計的推定要素が、実際の需給関係とかい離した圧力を生み出していると説明した。ミランは「ノイズを除いた実質物価は目標値と大差ない」と主張し、個人消費支出（PCE）指標が2.8%を記録したものの、歪み分を除けば2%をやや上回る水準だと明らかにした。市場ベースのコア物価が2.6%未満で、住宅部門を除けば2.3%を下回るとの分析も示した。
この発言は、最近FRBが3回連続で0.25%ポイント（p）ずつ利下げし、政策金利を3.5〜3.75%に引き下げたにもかかわらず、内部論争が収まらない状況で出た。前回会合では連邦公開市場委員会（FOMC）委員3人が決定に反対票を投じ、ミランはこの中でも0.50%pの利下げを求め、最も強硬な主張を展開した。ミランは「政策を不必要に硬直的に維持することは、結局は雇用減少につながる」と警告した。
一方、ジョン・ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁は追加利下げのハードルは高いと断言した。ウィリアムズは「経済は来年に向けて非常に有利な位置へ移行している」と述べ、FRBの慎重なアプローチが正しいと強調した。スーザン・コリンズ・ボストン連銀総裁も利下げ自体には賛成したが、追加措置のためにはより明確なインフレ動向を確認すべきだと明らかにした。
ミランの発言は、ジェフ・シュミド・カンザスシティ連銀総裁が示した見解と正面から衝突した。シュミドは西部と中西部の家計・企業で依然として深刻な物価不安が存在すると述べ、先週の会合では金利据え置きを主張した。シュミドは「インフレは依然として高過ぎ、労働市場は冷却したが均衡を保っている」と診断した。
最近の米政府の長期シャットダウンで主要な経済指標の公表が遅延し、FRBが判断すべきデータ環境は一段と不確実になった。インフレと雇用のデータが予定通り提供されず、内部の意見の隔たりはさらに拡大し、これは金融政策の経路に対する不確実性を高めている。新たな統計は今週後半に公表される予定だ。
政治圧力もミランの発言に重みを与えている。ドナルド・トランプ大統領は、FRBが利下げペースを過度に遅らせていると批判し、利下げ幅は「少なくとも倍であるべきだった」と攻撃した。トランプはパウエル議長を「冷淡な人物」と非難し、来年5月の任期満了を前に次期議長の人選を近く断行することを示唆した。ケビン・ハセット米大統領経済顧問兼国家経済会議委員長とケビン・ウォッシュ前FRB理事が有力候補として取り沙汰されている。