ラグジュアリーホテルチェーンのフォーシーズンズは来年3月にクルーズ用大型ヨット「フォーシーズンズI」を披露する予定だ。全長679フィート（207m）のこのヨットには95室のスイートが設けられ、一部スイートは最大1万平方フィート（929m²）規模で米国の平均的な住宅の約5倍に達する。フォーシーズンズはフォーシーズンズIのほかに2隻のクルーズヨットを追加で建造中である。
フォーシーズンズだけでなく他のホテルグループもラグジュアリークルーズ市場の攻略に乗り出している。スイスのラグジュアリーホテルグループであるアマンは2027年春にクルーズヨット「アマンガティ」を就航させる予定だ。全長600フィート（183m）のアマンガティには47室のスイートが用意され、内装は日本の旅館から着想を得てデザインされた。
マリオットグループ傘下のラグジュアリーホテルチェーンであるリッツ・カールトンはすでに2022年にカスタムメイドのクルーズ用ヨット「エブリマ」を披露した経緯がある。エブリマには149室のスイートが設けられている。リッツ・カールトンは2024年の「イルマ」、今年の「ルミナラ」など新たなクルーズヨットを相次いで公開した。2隻には最大226室のスイートがあり、宿泊客の要望を反映して大型プールも備えている。
ラグジュアリーホテルチェーンが相次いでクルーズ市場に参入する理由は、この市場の成長可能性が大きいと判断しているためだ。CNNは「世界的なラグジュアリーホテルブランドが興味深い競争を繰り広げている。彼らの目標は海上で最高になること、あるいは少なくともそう主張できる自負だ」とし、「企業は強力なブランド力を通じて富裕な旅行者がクルーズ旅行という新たな領域に足を踏み入れるよう誘導できると信じている」と11日（現地時間）に報じた。
ラグジュアリーホテルの主な顧客層は景気低迷下でも余暇消費を惜しまない傾向にあるが、これまではクルーズに対する固定観念などからクルーズ市場を積極的には利用してこなかった。実際にリッツ・カールトンホテルの常連でもあるクルーズヨット利用客のうち約半数は、リッツ・カールトンクルーズヨットを通じて初めてクルーズ旅行を経験したことが分かった。
リッツ・カールトンの親会社であるマリオット・インターナショナルのラグジュアリー部門社長ティナ・エドマンソンは自社のヨットサービスを「ラグジュアリークルーズとプライベートヨット旅行の中間地点、すなわち顧客が両者の長所をすべて享受できる形態」と説明し、「当社はクルーズ旅行を全く検討していなかった人々にクルーズの魅力を紹介している」と述べた。
ホテルチェーンがブランド忠誠度の高い顧客を活用して事業を多角化しようとする意図もある。フォーシーズンズヨットのベン・トロード最高経営責任者（CEO）は「フォーシーズンズはすでにほぼ10年間プライベートジェットサービスを運営してきた。ヨット事業はその自然な延長線上にある」とし、フォーシーズンズヨットがパリの「ホテル・ジョルジュV」やマイアミの「サーフクラブ」のように最高級ブティックホテルと同等の体験を提供することを望むと明らかにした。
ラグジュアリーホテルが運航するクルーズ船であるだけに、サービスと設備も最高級ホテルに匹敵する。リッツ・カールトンは陸上のホテルと同様に、顧客満足のため従業員1人当たり最大2000ドル（約295万円）までを自律的に使用できる権限を付与している。フォーシーズンズは陸上のリムジンサービスに加え、顧客がヨットに乗降できるよう小型のラグジュアリーボートも運用する。両ホテルブランドはミシュラン星付きシェフを招へいし、レベルの高いダイニング体験を提供することもある。