米中間の人工知能(AI)覇権競争が激しさを増すなか、米国投資家が中国AI企業に関連する上場投資信託(ETF)に資金を大量に振り向けているとの分析が出た。中国の技術への投資を制限しようとする米議会の動きと、中国AIラリーに乗って収益を上げようとするウォール街の思惑が正面からぶつかっている格好だ。
10日(現地時間)ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、中国の大型テック株の株価は年初来で急騰している。香港とニューヨークに同時上場するアリババ株は年初比で80%以上上昇し、4年ぶりの高値を記録したほか、テンセントとバイドゥの株価も約50%上がった。投資家は大規模言語モデル(LLM)を含む生成AI競争で中国企業が遅れを取らないとの期待を反映し、これら銘柄を組み入れたと評価した。アリババは今後3年間でAIインフラと汎用人工知能(AGI)開発に530億ドル(約760兆ウォン)を投資すると明らかにし、これが株価ラリーを牽引する材料となった。
米国投資家の買いも目立って増えた。資産運用会社バンガード、ブラックロック、フィデリティが運用するファンドは今年、香港上場のアリババ持ち分を拡大した。中国テクノロジーセクター全般を追随するETFにも資金が流入した。ニューヨークに本社を置くクレインシェアーズCSIチャイナ・インターネットETFは7月以降に14億ドル増加し、運用規模が90億ドルに迫り、インベスコ・チャイナ・テクノロジーETFは同期間に2倍以上に拡大して300億ドル水準に達した。
英国ロンドンの投資会社ラッファーは、アリババ・テンセントなど中国大型テック株の株価収益率(PER)がグーグルの親会社アルファベットなど米ビッグテックより低く、バリュエーション妙味が大きいと判断した。190億ポンド(約250億ドル)を運用するラッファーのポートフォリオは今年の収益率が10%を上回り、その背景の一つとしてアリババの比率拡大を挙げた。億万長者ヘッジファンドマネジャーのデービッド・テッパーも開示を通じ、アリババを自身が運用するアパルーサの最大保有上場株に据え、中国テック株に対する楽観論を示した。
こうした動きは米政界の空気とは対照的である。米議会は、中国へ流れる米資本が長期的に中国の軍事・技術力を高め、米国の安全保障を脅かしかねないとして規制強化に乗り出した。年次国防授権法(NDAA)には、トランプ大統領に対し中国のAIや量子コンピューティング、極超音速兵器など先端技術分野への投資を追加で制限し、米国投資家が中国のテクノロジー企業をどのように支援しているかについて、より多くの情報開示を求める権限を付与する条項が盛り込まれた。下院議長のマイク・ジョンソンは「共産中国の攻撃的な振る舞いを支える投資は停止されるべきだ」と述べた。
それでも中国のAIとテック株への関心は再び高まっている。新型コロナウイルス感染症(コロナ19)による封鎖、ビッグテック規制、不動産不良懸念で一時は中国から手を引いていたグローバル投資家が、AI景気をきっかけに一部ポジションを回復しているためだ。上場株式市場では米政府の直接的な制約がほとんどないことも、ウォール街に有利に働いた。野村の中国インターネット担当アナリストは「中国は自前でも巨大なデジタル内需市場を持っており、米国投資家の資金流入はさらに増えるだろう」と見通した。