シリコンバレーが再び巨大な技術サイクルのただ中に立っている。1990年代のドットコムバブルを想起させる人工知能(AI)ブームが続いているが、複数の構造的な違いにより当時とは異なる結果になる可能性が大きいとの分析が出ている。当時のドットコム狂騒はアマゾンやグーグルのような企業を誕生させた一方、2000年の崩壊後に5兆ドル(約6900兆ウォン)以上の企業価値が消失し、失業率が跳ね上がるなど米国経済全体に衝撃を残した。
9日(現地時間)ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、現在のAIブームは外形的には似ているが中核はまったく異なる。最大の違いは、AI産業がマイクロソフト、グーグル、Meta(メタ)などすでに数兆ドルの価値を持つ企業の資本と人材に引き上げられた「ボトムアップ型ブーム」である点だ。ドットコム期のスタートアップは資金が不足した状態で競争し、インターネット自体が初期プラットフォームだったため成長にも時間が必要だった。これに対し現在のAI投資は既存事業を侵食せず、企業は安定したキャッシュフローを維持したままデータセンターとモデル開発に数十億ドルを投入している。
規制環境も明確に変わった。トランプ政権はAI育成を政策の優先順位に置き、規制を緩和している。これは1990年代にクリントン政権がマイクロソフトを相手取り反トラスト訴訟を提起し、テック企業をけん制したことと対照的である。当時と異なり、AIの普及を阻む制度的な障壁は事実上ほとんどない状態だ。
市場規模も比較にならない。ドットコムブーム当時、シスコ・マイクロソフト・インテルの時価総額は最大で約5000億ドル(約690兆ウォン)水準だった。現在エヌビディアの企業価値は4兆5000億ドル(約6210兆ウォン)を超え、アマゾン・グーグル・Meta(メタ)・オープンAIまで含めれば、単一産業群の合計が2000年の米国全体の株式市場規模を上回る。ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(Fed・FRB)議長は「AI企業は明確なビジネスモデルと収益構造を持っている」と述べ、ドットコム時代とは次元が違うと評価した。
技術の性格自体も違いを生む。インターネットはネットワークが拡張されるほど価値が高まったが、初期利用者が極めて少なく成長まで時間が必要だった。AIはリリース直後から生産性を高め、企業の売上につながる構造だ。実際にAIトレーディング企業は、インターネット導入のスピードより15~60倍速い拡散速度を見積もっている。ベンチャー投資家のベン・ホロウィッツは「AI製品は既存製品を迅速に代替するほど即時的な価値を提供している」と語った。
もちろん警戒シグナルもある。AI企業間の投資・持分構造が複雑に絡み合い、ドットコム時代の過熱を想起させるとの指摘が出ている。JPモルガンは「資本がAI企業を追いかけている状況であり、AIが資本を呼び込む構図ではない」と分析し、一部の評価が過度だと警告した。AI製品が実際に稼働する前に資金が枯渇する可能性があるとの指摘も続いた。
それでもシリコンバレーでは今回のサイクルが根本的に異なるとの認識が優勢だ。ホロウィッツは「誰もがバブルを語る状況は、まだバブルではないという最も明確なシグナルだ」とし、「一部企業の価値が調整されてもAI産業全体は成長を続ける」と見通した。