米連邦準備制度(Fed、FRB)が10日(現地時間)、ジェローム・パウエルFRB議長が主宰する最後の連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。
今回のFOMCは、FRBの独自色の強い金融政策の時代が当面幕を下ろす狼煙となる見通しだ。ウォール街や学界は金利の行方よりも、ドナルド・トランプ大統領が指名する次期「経済司令塔」が誰になるのか、そしてそれによってFRBがどの程度政治的な影響力にさらされるのかに神経を尖らせている。
この日、CNBCやブルームバーグなど主要経済メディアによると、トランプ大統領はパウエル議長の最後のFOMCが終わる10日に合わせて次期FRB議長候補らとの連続面談を開始する。トランプ大統領はこの日、政治専門メディアのポリティコに「次期FRB議長には即時の利下げを支持する人物を選ぶ」と明らかにした。パウエル議長の任期は2026年5月までである。
しかしトランプ大統領は就任直後からパウエルを強く圧迫し、任期より早く交代させる意志を繰り返し示してきた。トランプ大統領は過去に「FRB議長の解任は前例がないが不可能ではない」という発言で、金融政策への大統領の介入権限を主張した。
こうした姿勢は単なる脅しにとどまらなかった。8月、トランプ政権は前任のバイデン政権時に任命されたリサ・クックFRB理事を住宅ローン関連書類の問題などを理由に解任しようとし、FRBの人事権掌握を試みた。これはFRB理事は「正当な理由(for cause)」がなければ解任されないとする1913年の連邦準備法(Federal Reserve Act)の趣旨に反する行動だ。行政府とFRBを切り離す長年の慣行にも正面から対抗した。
ブルームバーグは専門家の話として「米連邦最高裁ですら他の行政機関長に対する大統領の解任権は広く認めるが、FRBだけはその歴史的特殊性を勘案し例外的な独立機関とみなす」と伝えた。
現在、パウエル議長の後任有力候補としては、トランプ第1期政権でホワイトハウス経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたケビン・ハセットが挙がっている。ハセットはトランプ大統領の経済哲学を最もよく理解する人物との評価を受けている。トランプ大統領が望む「低金利・高成長」路線を忠実に遂行する可能性が高いというのが大方の見方だ。
ハセットはこの日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催のイベントで「FRB議長になり、トランプ大統領が利下げを指示した場合どうするか」との質問に「ただ正しいことをすればよい」と述べた。
専門家らは、行政府寄りの人事により「政治化したFRB」がもたらす経済的波紋は小さくないと警告した。経済分野で最も影響力の大きいシンクタンクの一つであるピーターソン国際経済研究所(PIIE)は最近のシミュレーション報告書で具体的な数値を示しつつ懸念を表明した。同報告書によれば、トランプ大統領の圧力でFRBが政治的独立性を失い過度な利下げを断行した場合、今年の米国国内総生産(GDP)は潜在成長率を1.1%ポイント(p)上回り、一時的に成長が加速すると予測した。しかしその代償として2028年にはGDPが基準線より1.2%低下し、インフレ率は2025年の基準線比で最大2.8%ポイントまで跳ね上がる見通しだという。
PIIEは「政治的圧力に屈した金融緩和は当初2年間は景気刺激効果を生むが、その後10年以上、低成長と高インフレというスタグフレーションの沼に陥る」とした。さらに「2040年までに米国の累積実質GDPは、FRBが独立性を維持した場合に比べ2兆5000億ドル(約3680兆ウォン)減少する」とし、「物価水準も2040年には基準線より約41%上昇する」という厳しい見通しを示した。短期的な政治的利益のために中央銀行の手綱を握る行為は、結局は莫大な経済的ツケとして跳ね返るとの指摘である。
外交問題評議会(CFR)は歴史的事例を挙げ、警告の度合いを強めた。1970年代、リチャード・ニクソン大統領は再選のため当時のアーサー・バーンズFRB議長に圧力をかけて金利を引き下げさせた。これは1982年まで二桁に達する「大インフレ(Great Inflation)」時代を引き起こした。
CFRは最近のトルコの事例も併せて言及した。トルコはレジェプ・エルドアン大統領が中央銀行を掌握し、自身の側近を総裁に据えて無理に金利を引き下げた結果、昨年のインフレ率が75%まで急騰した。CFRは「政治権力が金融政策を左右すれば経済がいかに壊れるかを示す生々しい反面教師だ」と述べた。
米国がいかに基軸通貨国であっても、市中通貨量(M2)を左右するFRBの信認が崩れれば、ドルの地位低下と米国債金利の急騰(価格下落)は避けられないとの指摘も出た。経済政策研究所(EPI)は声明で「大統領がFRBを掌握すれば、経済主体は金利がもはや健全なデータではなく大統領の気まぐれで決まると信じるようになる」とし、「迫り来るマクロ経済危機に対処するFRBの能力への疑念を増幅させる」と批判した。