ドナルド・トランプ米政権2期発足後しばらく米政界から距離를 두고 있던トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーの存在感が再び高まっている。クシュナーは主要な外交交渉はもちろん、最近世界の注目を集めたコンテンツ企業の取引にも登場した。
ワシントン・ポスト(WP)は9日(現地時間)「トランプにとって不可欠な二度目の和平特使として再登場したジャレッド・クシュナー」という見出しの記事で、クシュナーが「自身の投資会社を設立して新たなキャリアを始めたにもかかわらず、トランプの娘婿として再び重要な外交交渉に深く関与している」と報じた。
クシュナーは先月初め、ホワイトハウス中東特使スティーブ・ウィトコフとともにロシアを訪れ、ウラジーミル・プーチン大統領と約5時間にわたり会談を行った。2人はプーチンとの会談に先立ち、ジュネーブとフロリダでマルコ・ルビオ国務長官とともにウクライナ側関係者らと面会し、先週はルビオ抜きでマイアミで3日間の追加協議を続けた。
10月にはクシュナーがガザ地区の交渉に関与し、イスラエルとハマス双方の合意をいずれも取り付けた。当時トランプ大統領は、クシュナーが交渉に参加した理由について「自分がジャレッドをその場に置いたのは、非常に賢いだけでなく、その地域をよく知り、人々を知り、多くのキーパーソンと緊密な関係を結んでいるからだ」と説明した。
クシュナーはトランプ1期政権当時、妻のイバンカ・トランプとともに強い存在感を示した。ホワイトハウス上級顧問として働き、中東和平、米国のイノベーションおよびインフラ活性化、停滞していた刑事司法改革の再始動など多様な課題を担った。しかし昨年の大統領選の過程では目立った活動を見せず、再び政治の舞台の中心へ戻ってきた。
WPは「クシュナーは公式の役職や肩書がないにもかかわらず、政権を離れた後も着実に水面下で活動してきた」とし、「クシュナーが突如として外交政策の中核人物に浮上したことをめぐり、莫大な海外金融の利害関係、今年プーチンと5回の一対一会談を行いながらも目立った成果を出せていないように見えるウィトコフの役割に対する疑問が提起されている」と伝えた。
クシュナーの活動は外交の舞台にとどまらない。最近のワーナー・ブラザースの買収戦がネットフリックスとパラマウントの「2陣営」に再編される中、クシュナーはワーナーに対する敵対的買収・合併(M&A)を表明したパラマウントに資金を供給している。先立ってニューヨーク・タイムズ(NYT)は、パラマウント買収を進める投資家リストに、クシュナーが設立したプライベート・エクイティのアフィニティ・パートナーズが含まれたと報じた。
クシュナーの存在感が高まる中、クシュナーをめぐる「利益相反」論争も再燃している。アフィニティにサウジアラビアの政府系ファンドが20億ドル(約3兆ウォン)を投資するなど、クシュナーの事業が中東と深く連動しているためだ。さらにパラマウントのワーナー買収戦では、クシュナーのアフィニティだけでなくサウジアラビア・アブダビ・アラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンドなど3カ所が資金調達に参加することになり、最終的な買収者をトランプ大統領が決定する可能性も指摘されている。
前掲のNYTも「アフィニティ・パートナーズの参加はワーナー・ブラザースの買収戦に新たな政治的変数として作用する」とし、「(オラクル会長ラリー)エリソン一族がアフィニティ・パートナーズの助けで契約を成立させた場合、持株会社の持分の一部がトランプ一族の所有となり得る」と伝えた。これに対しトランプ大統領は、こうした論争を意識したかのように「ワーナー・ブラザースの取引に関し、クシュナーと別途の対話を交わしたことはない」と明らかにした。