人工知能（AI）産業の拡大に伴い、米国各地で大規模データセンターの建設が相次ぐなか、有色人種が居住する地域が環境負担を真っ先に背負っているとの懸念が高まっている。
8日（現地時間）Axiosによれば、市民団体はAIインフラが既存の産業施設と同様に社会・経済的に脆弱な地域に集中し「環境的不平等」を深刻化させていると批判した。
大規模データセンターは莫大な水・電力・土地を必要とする施設である。市民団体は、この種の施設がすでに大気汚染や産業施設の密集問題に苦しむ黒人・ラテン系の密集地域に主として立地していると指摘した。政治的な抵抗が弱く不動産価値が低い地域ほど汚染施設が集中するという、かつての高速道路・製油施設・製造業インフラのパターンがAIインフラでも繰り返されているということだ。データセンター1カ所は小都市並みの電力を消費し、1日に数千トンの水を使用して地域住民の水道・電力費の上昇を招く恐れがあるとの警告も出ている。
論争の中心にはイーロン・マスクのAI企業xAIがある。xAIが黒人居住比率が高いテネシー州メンフィス南西部で推進中のスーパーコンピュータデータセンターをめぐり、市民団体である全米黒人地位向上協会（NAACP）が法的対応に乗り出した。NAACPはこの施設のガス発電機が大気浄化法に違反するとして、公害増加を問題視した。タイムの報道によれば、データセンター付近の二酸化窒素濃度は最大79%増加し、地域はすでに喘息・呼吸器疾患の発病率が高い場所として知られている。xAIは追加装置により「米国で最も低排出の施設をつくる」と弁明したが、論争は収まっていない。
テキサス・バージニア・アリゾナ・フロリダ各州でも同様の軋轢が生じている。テキサス州アマリロでは、世界最大のAIデータセンターと呼ばれるプロジェクトが、地域の中核的地下水源であるオガララ帯水層の枯渇を加速しかねないとの懸念の中で強い反対に直面した。バージニア北部はすでに世界最大のデータセンターハブだが、黒人コミュニティは「拡張工事で地域が圧倒されている」と訴えた。アリゾナ州ツーソン近郊のラテン系密集地域では、新設予定のデータセンターが毎年数千トンの水を消費し、暑さ・干ばつ・経済的脆弱性が重なる地域の負担を一段と大きくしかねないとして反発が続いた。
フロリダ州セントルーシー郡でもデータセンターの開発計画が地域社会の激しい反対に直面した。メンフィスで活動する環境団体ヤング・ギフテッド・アンド・グリーンのラトリーシャ・アダムズ代表は「データセンターは雇用も多くなく、経済的に脆弱な都市を標的にする傾向がある」と述べ、「今起きていることが今後のデータセンター規制の基準を左右する」と語った。
一部の先住民団体は、西部地域を中心にAIデータセンターが部族の同意なしに水・土地などの資源を大規模に使用しているとして「現代版の資源採取産業」だと批判した。
NAACPは近くワシントンDCで環境・技術・市民権分野の関係者を集めて戦略会議を開催する予定だと明らかにした。関係者はAIデータセンターに関し、今後の政策・法的対応戦略を協議する予定である。