数十年にわたり減少を続けてきた世界の乳幼児死亡率が、今年初めて反転上昇するとの見方が出た。この指標は1990年代以降、一貫して低下傾向を示してきた。
4日(現地時間)、ゲイツ財団(旧ビル&メリンダ・ゲイツ財団)は、2025年の世界の乳幼児死亡者が前年に比べ約24万3000人増加する見通しだと明らかにした。これはワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)の分析によるもので、IHMEはゲイツ財団の支援を受けて各国の保健指標を集計している。
ゲイツ財団の報告書によると、インドなど大半の国では乳幼児死亡者が引き続き減少すると見込まれる。2025年の予想乳幼児死亡者数は480万人で、1990年(1160万人)比で58%減と大幅に改善してきた。ワクチンをはじめとする医薬品の提供や、妊産婦・新生児を対象とした医療サービス、安定的な栄養供給が下支えした結果とみられる。
それでも乳幼児死亡率が増加基調に転じた理由はアフリカにある。報告書によれば、▲マダガスカル(8万2156人)が前年に比べ最も増加した死亡者数を記録し、続いて▲コンゴ民主共和国(6万8739人)▲ソマリア(3万4345人)▲エリトリア(2万8138人)が続いた。乳幼児死亡率が高い上位15カ国のうちアフリカは14カ国で、中東では唯一、イエメン(4195人)が14位に入った。
こうした死亡率の反騰には、先進国のグローバル援助縮小が決定的な影響を与えたとの分析だ。ビル・ゲイツゲイツ財団議長は「ここ数年で先進国の供与国によるグローバル保健支援が27%も減った」とし、「とりわけ米国が国際開発庁(USAID)を縮小して支援を大幅に削減したことが、アフリカを病ませた決定的要因だ」と強調した。アンナ・ケリー米ホワイトハウス副報道官は「米国の援助はパートナー国の自立を促す方向へ再調整されている」と説明している。
実際にアフリカ全域では深刻な変化が感知されている。ソマリアでは保健当局が予防接種を中断し、はしか・ジフテリア・急性下痢症が再拡大しており、妊婦の医療アクセス遮断や治療用栄養食の枯渇などが重なって複合的な危機が続いている。国連によると、今年ソマリアで運営が停止している医療施設は200カ所以上に達する。
米国の非営利保健機関マーシーコーのメラク・イルガ副代表は「現場の医療従事者が共通して報告しているのは『より重症の子どもがより多く訪れる』という点だ」と述べ、「一部の診療所では来院するすべての子どもが栄養失調の状態だ」と語った。
ゲイツ議長は「今の状況を覆すまでに最低でも5年はかかる」とし、「現時点では増加傾向を凍結することが最善の成果になり得る」と診断した。