ドナルド・トランプ米大統領が米国の退職制度改革モデルとしてオーストラリアの「スーパーアニュエーション（Superannuation）」を挙げた。
3日（現地時間）にニュースウィークやシドニー・モーニング・ヘラルドなどによると、トランプ大統領はこの日ホワイトハウスの寄付イベントでオーストラリアの年金制度に言及し「われわれはこの案を非常に真剣に検討している」と明らかにした。トランプ大統領はオーストラリアのモデルについて「非常に優れた計画であり、（オーストラリアで）きわめて成功裏に機能した」と評価した。
スーパーアニュエーションはオーストラリアが1992年から導入した国家レベルの確定拠出型退職年金制度である。核心は「強制性」である。オーストラリアは雇用主が労働者の給与の一定割合を退職年金口座に義務的に拠出することを法律で強制している。導入当時3%だった義務拠出比率は段階的に引き上げられ、今年7月時点で12%に跳ね上がった。
コンサルティング会社マーサは専門家の発言を引用し「オーストラリアが運用するスーパーアニュエーション制度にはオプトアウト（脱退）オプションがない」とし「どこで働こうとも、雇用主は引退時点までこの資金に手を付けることはできない」と述べた。
2025年にマーサが集計したCFAグローバル年金指数によると、オーストラリアはB+（76.3点）格付けを受け、世界の上位圏に入った。一方、米国はC+（66.0点）にとどまった。ドイツ銀行の分析によれば、オーストラリアのスーパーアニュエーション資産規模は約4兆5000億豪ドル（約3兆米ドル）でGDPの150%に達する。世界的に見ても第4位の規模へと成長した。
一方、米国を代表する私的年金である401(k)は徹底して自発性に基づく。雇用主が制度を導入するか、労働者が加入するか、いくら拠出するかはすべて選択事項である。この違いは極めて明確な「カバレッジ（加入率）格差」を生んだ。オーストラリアでは事実上、全国民が退職年金システムの恩恵を受ける。これに対し米国では25〜64歳の就業可能人口のうち、雇用主が提供する退職年金の枠内にあるのはおよそ半分にとどまる。
とりわけ、きちんとした職を得られていない低所得層は退職年金から遠い。昨年の米国国勢調査局のデータによれば、正規職労働者のうち40.6%に当たる4060万人は退職年金にアクセスすらできていない。パートタイム労働者ではこの比率が79%まで跳ね上がる。所得水準別の格差はさらに深刻である。米国の最低所得10分位（年収2万7400ドル未満）の労働者のうち78.7%は退職年金へのアクセス権がない。
そのうえ7〜8年以内に財政危機に直面する可能性が大きい。米議会予算局（CBO）や社会保障局によれば、社会保障信託基金は早ければ2033〜2034年に枯渇すると推定される。別途の改革措置がなければ、給付額は自動的に一律で20〜24%削減される。
オーストラリア型モデルは、労働者が自ら老後資金を直接積み立てる確定拠出（DC）型の性格が強い。現世代が引退世代を支える米国型の賦課（Pay-as-you-go）方式より国家財政の負担が小さい。コンサルティング会社のマーサは「人口高齢化と出生率低下の状況下で、このようなシステムは将来世代の財政負担を減らすのに適している」と分析した。
トランプ政権は、オーストラリア式スーパーアニュエーション制度が出生率の押し上げにも資するとの見方を示した。老後不安を解消すれば若年層がより多くの子どもを産むだろうという論理である。
最大の問題は両国の経済規模の差である。オーストラリアの人口は2700万人だが、米国は3億4300万人に達する。さらに米国にはすでに401(k)と社会保障制度という巨大な既得権システムが存在する。エコノミック・イノベーション・グループ（EIG）のジョン・レティエリ最高経営責任者（CEO）は、政府補助金を含む強制貯蓄の提案について「（米国人の思考様式からすると）非現実的で、費用が過大で、政治的濫用にも脆弱だ」と述べた。
一部の専門家は、トランプ政権がオーストラリア式の年金制度をそのまま移植するのではなく、401(k)に自動登録（auto-enrollment）機能を強化し低所得層への政府支援を拡大するハイブリッド形で米国に適用する可能性が高いとみている。シドニー・モーニング・ヘラルドは専門家の話として「トランプ政権は、オーストラリア式年金システムの自動拠出、普遍的カバレッジ、引退時点までの強制貯蓄機能が生み出す巨大な資産蓄積効果に注目している」と伝えた。