ベネズエラ政権に対する米国トランプ政権の圧力強化を受け、ウゴ・チャベス元大統領一族がニコラス・マドゥロ現大統領を守る動きに出た。ウゴ・チャベスの兄であるアダン・チャベスは「兄弟を守る」として、連日テコンドーの品勢である太極1章を繰り返している。
2日、ベネズエラの現地メディアなどによると、ウゴ・チャベスの弟アルヘニス・チャベスは最近「ニコラス・マドゥロを最後まで支持する」とし、「ベネズエラが外勢の攻撃対象となる場合、自身の武術の腕前を発揮して米軍に対抗する意思がある」と明らかにした。
9月にはウゴ・チャベスの末娘ロシネス・チャベスがマドゥロ大統領が結成したボリバル民兵に公開で合流した。ロシネス・チャベスは入隊の場で「祖国のために身を投じる」と発言し、親政府メディアが大々的に報じた。
ボリバル民兵は平時には社会秩序の維持や地域防衛に動員されるが、有事には正規軍を支援する武装組織に分類される。ロシネス・チャベスの合流は、米国と野党の脅威に対抗してマドゥロ政権を防衛するというチャベス一族の象徴的な決断と解釈される。
米国のドナルド・トランプ政権は現在「麻薬密売との戦い」を掲げ、ベネズエラへの圧力を強めている。先月は米国への不法麻薬搬入に関与した疑いを持ち出し、ベネズエラの「太陽のカルテル」（カルテル・デ・ロス・ソレス）を外国テロ組織に指定した。
トランプ政権は同時にニコラス・マドゥロ・ベネズエラ大統領を太陽のカルテルの首魁と位置づけ、マドゥロ政権への圧力水準を最高潮に引き上げた。これに加え、トランプ大統領がベネズエラの領空を飛行しないよう警告まで発し、軍事的緊張感も高まった。
米国に対抗し、チャベス元大統領一族はマドゥロ大統領を守るための決死の護衛行動を見せている。チャベス元大統領の実兄アダン・チャベスは8月から群衆の前でテコンドーの品勢や撃破動作を披露している。
アダン・チャベスは物理学者出身で、弟ウゴ・チャベスに左派革命理念を伝授した人物でもある。アダン・チャベスはとりわけ太極1章の武術デモンストレーションを行い、「外勢介入に対抗する意思を明らかにするためだ」とし、「武術で兄弟（マドゥロ）を守る」と語ったこともある。
ただし、ベネズエラ与党内で理念的正統性を象徴する人物が太極1章という初歩的な品勢を「米軍を打ち負かす武術」として掲げたことで、ベネズエラ内外で嘲笑も噴出している。太極1章はテコンドーの基本姿勢と動作を身につける入門段階の品勢である。
一方で、一部ではチャベス一族がマドゥロ政権崩壊時に直面する地位喪失を恐れているとの評価も出ている。アダン・チャベスはチャベス政権下で長官職と知事を歴任し、現在もマドゥロ政権の中核支持層かつ助言者の役割を担っている。