ノーベル賞受賞経済学者のポール・クルーグマンが、最近のビットコイン急落はドナルド・トランプ大統領の政治的影響力の弱体化と直結していると主張した。クルーグマンは「（トランプ主義に賭ける）『トランプ・トレード』が崩れたと見ればよい」と強調した。
26日（現地時間）フォーチュンによると、ビットコインは先月の史上最高値である12万6,000ドルを付けた後、1カ月の間に急落し、現在は約8万7,000ドル水準にとどまっている。先週には6カ月ぶりの安値となる8万1,000ドルまで下落した。まもなく9万ドル台を回復はしたが、今回の急落で時価総額1兆ドル規模の売り圧力が殺到し、ビットコインに大規模投資を続けてきたトランプ一族は約10億ドルの資産損失を被ったとされる。
クルーグマンはニューヨーク・タイムズのコラムニスト時代からトランプと暗号資産産業全般に批判的な立場を示してきた。クルーグマンは最近の自身のサブスタックのニュースレターで「トランプは暗号資産産業の利害関係と深く結びついており、この分野に報いる意思が強い」と指摘した。トランプ大統領は実際に8億7,000万ドル規模のビットコインを保有しているとされ、トランプの息子たちが関与するビットコイン採掘企業アメリカン・ビットコインは9月にナスダックに上場し、50億ドルの評価を受けた。
クルーグマンはトランプ政権の政策も暗号資産強気相場を後押ししてきたとみている。トランプ大統領は米国内の政府ビットコイン保有構想を提案し、米国人の退職資金が暗号資産に投資できるよう認める大統領令にも署名した。先月には資金洗浄法違反の罪を認めたバイナンス創業者のチャンポン・ジャオを恩赦した。
しかしクルーグマンは、最近の市場の動きを政治的後光の弱まりとして解釈した。共和党内部でトランプ政策への支持が減り、ニューヨーク・シアトルなど主要都市の選挙で民主党・社会主義志向の候補が相次いで勝利し、トランプの政治的基盤が揺らいでいるということだ。クルーグマンは「トランプの力が弱まるにつれ、事実上トランプ主義への投資とみなされていたビットコインが推進力を失った」と分析した。クルーグマンは暗号資産市場が政治的権力と密接に連動してきた点を強調し、「弱体化したトランプには暗号資産政策を押し通す力が足りないだろう」と述べた。
クルーグマンはビットコイン急落を単なる資産価格の変動ではなく、トランプの政治力低下を反映した動きだと位置づけた。過去にビットコイン価格がトランプ政権の各種政策発表や規制緩和のシグナルに反応して急騰した例を挙げつつ、「政治的後光が弱まる瞬間、暗号資産市場も揺らがざるを得ない」と述べた。
市場でもこの見方が広がっている。一部の専門家は、ここ数年ビットコインが『親トランプ資産』として認識されてきたと分析した。トランプ一族が直接ビットコインのエコシステムに関与する中で、価格の変動性が政治イベントに過度に連動し、実際に関税の検討や政策発表のたびに相場が急落あるいは反騰する現象が繰り返されたということだ。専門家は「政治リスクが高まった状況では、ビットコインにもはや安全資産の役割を期待しにくい」とし、「今後の米国の政治地図の変化が価格動向の主要な変数として作用するだろう」と展望した。
これに対し、クシ・デサイ米ホワイトハウス報道官は「ビットコイン価格の変動を大統領の非経済的イシューと結びつけるのは荒唐無稽な主張だ」としてクルーグマンの解釈に反論した。クシ・デサイは「トランプ政権は暗号資産の発展に向けた政策を一貫して推進している」と述べた。