ドナルド・トランプ米国大統領が専用機エアフォースワンの機内で記者に向かって「静かにしろ、豚め」と発言する映像が公開され、米国社会で激しい批判が起きている。トランプ大統領がメディアに対し攻撃的な言葉を使ったのは今回が初めてではないが、今回の映像はメディアの増幅がなくとも急速に広まり、いつもより大きな怒りを引き起こしたとの評価が出ている。
19日（現地時間）の英ガーディアンの分析によると、問題の場面はキャサリン・ルーシー記者（ブルームバーグ通信）がトランプ大統領に対しエプスタイン関連文書の公開に、なぜ反対するのかを尋ねる過程で出た。トランプ大統領は質問が終わる前に指で記者を指し「豚め、静かにしろ」と言い、この映像はソーシャルメディア（SNS）で数百万回再生され拡散した。著名ユーチューバーのハンク・グリーンなど有名なオンラインの人物らも「数多くの暴言の中でも今回の発言はひときわ耐え難い」と批判した。
今回の怒りがとりわけ大きい理由は、映像が公開された時点の状況と重なったためである。最近、トランプ大統領は中間選挙の敗北、共和党のシャットダウン交渉の難航、経済の混乱など、相次ぐ政治的打撃を受けている。専門家は今回の暴言が窮地に追い込まれた大統領の苛立ちと過剰反応が表出した事例だと分析した。議会が公開したエプスタイン関連文書は、エプスタインが複数の関係者や女性に対し卑下的なやり方でコミュニケーションしていた状況を示すものであるため、女性記者に侮辱的な言葉を使った場面は、より大きな公憤を呼び起こした。
同じ時期、トランプは別の女性記者に対し、ムハンマド・ビン・サルマン・サウジアラビア皇太子とカショギ暗殺に関する質問をするなと面罵し、論争を拡大させた。米中央情報局（CIA）はカショギが皇太子の指示で殺害されたと結論づけた状況であり、トランプ大統領の対応はいっそう批判を受けた。メディア界では「女性記者を標的にした敵対的パターンが繰り返されている」との懸念が出た。専門家団体も「今回の事件は独立した一つの事例ではなく、メディアの基本機能を損なう長期的攻撃の延長線だ」との声明を出した。
ホワイトハウスはむしろルーシー記者の「機内での非専門的な行動」を問題視し、発言を正当化しようとした。具体的根拠は示さなかったが「記者も責任を負うべきだ」との論理を掲げた。しかし政界とメディアは、この対応が論争をさらに拡大させる結果を招いたと指摘した。
今回の映像はSNSを基盤とするリベラル陣営で急速に拡散し、新たな圧力戦術へと変わった。ギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事側は、トランプ大統領の顔を豚に合成した画像とともに「静かにしろ、豚め」という文句を繰り返し共有し、民主党のデジタル戦略家は「SNSのバイラルがいまやニュースサイクルを主導する時代だ」と評価した。
評論家は「トランプ2期でメディアの牽制機能が弱まった状況で、今回の映像は象徴的な怒りを呼び起こした事件として記録される」と分析した。