グローバル高級品企業の業績不振を招いた中国の消費者が、足元では欧州中心の既存ラグジュアリーブランドではなく自国ブランドを選好する様子を見せている。高額な海外高級品を消費する余力が低下したうえ、「グオチャオ(国潮・愛国消費)」ブームが重なった結果とみられる。
ブルームバーグ通信は16日(現地時間)、「約490億ドル(約71兆ウォン)規模の中国ラグジュアリー市場が変化している」とし、「海外プレミアムブランドへの支出は伸び悩む一方で、消費者が大きな金額を使う際には自国ブランドを選ぶ流れが鮮明になっている」と報じた。
現地では中国のジュエリー市場で『黄金界のエルメス』と呼ばれるラオフーゴールド、中国のバッグブランドのソンモント、プレミアム化粧品ブランドのマオゴーピンなど国内ブランドの消費が急増しているとブルームバーグは伝えた。
中国のデータ分析企業ビッグワンラボ(BigOne Lab)のデータをブルームバーグが分析した結果、ハンドバッグ・衣料・香水・化粧品・宝石など5つの中国ブランドが過去2年間で海外の競合ブランド7社よりも速い販売成長率を記録したことが分かった。ソンモントのオンラインのバッグ売上は約90%増加した一方、グッチの中国オンラインのバッグ売上は50%以上減少した。ラオフーゴールドの電子商取引売上も今年1〜3四半期の間に2年前比で1000%以上跳ね上がった。
これは欧州の高級品企業が中国市場で不振に陥っていることと鮮明な対比を成す。新型コロナのパンデミック終息後も中国の消費者が高級品消費に積極的に動かず、主要ラグジュアリー企業の株価は大幅に下落した。ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー(LVMH)は2023年の高値比で約30%、グッチの親会社ケリングは2021年の高値比で約60%下落した。
中国の電子商取引プラットフォームでは中国ブランドの売上が海外の高級ブランドを上回る事例も増えている。ラオフーゴールドは昨年10月までの12カ月間にティーモールで6億3000万ドル(約9192億ウォン)の売上を記録した一方、フランスの高級宝飾ブランドであるヴァン クリーフ&アーペルの売上はその10分の1にも満たない5700万ドル(約832億ウォン)にとどまった。
ブルームバーグは9月に上海を訪れたベルナール・アルノーLVMH会長がソンモントのハンドバッグ2個を購入し、ラオフーゴールドの店舗まで訪れた事実に注目した。ブルームバーグは「見た目には些細な行動のようだが象徴性は大きかった」とし、「現代ラグジュアリーの概念を定義してきたアルノーが、今や中国でラグジュアリーの次章を開くかもしれないブティックを見て回った」と評価した。
中国で国産ブランドの選好度が高まった理由としてまず価格が挙げられる。不動産発の景気低迷が長期化し、消費者は海外高級品よりも価格競争力のある国内ブランドに目を向けている。中国のソーシャルメディア(SNS)でエルメスのピコタンの「代替品」と呼ばれるソンモントのバケットバッグは約421ドル(約61万ウォン)で、ピコタン価格の10分の1から20分の1水準にすぎない。
グオチャオブームも一役買った。中国の若い消費者は西洋ブランドのロゴがもたらす象徴性よりも、自国ブランドが基礎とする中国文化への自負心を重視し始めた。ブルームバーグ通信は「ソンモントのようなブランドは中国の歴史・芸術・日常から深いインスピレーションを得ている」とし、「現代のラグジュアリーは『中国的』であることもあり得る」と伝えた。
もっとも、中国ブランドが海外の高級ブランドと肩を並べるまで成長するには道のりはまだ長い。ゴールドマン・サックスのリテールアナリストであるミシェル・チョンは、年商100億人民元(約2兆ウォン)を超えた中国ブランドはほとんどないとしながら、「中国市場は非常に大きいため、人気商品を前面に出せば10億元、さらには30億〜50億元まで売上を伸ばすことはできるが、それ以上成長するには強力な経営陣、有能な人材、そして長期的ビジョンが必要だ」と指摘した。