米国の建設業界がトランプ政権の強硬な移民取り締まりで人手不足が深刻化している。建設労働者の3人に1人が外国出身であるなか、移民税関捜査局(ICE)の検問と急襲が続き、合法・不法の労働者を問わず不安に包まれている。業界は工期の遅延とコスト急騰がすでに現実化していると指摘した。
6日(現地時間)に米公共ラジオのNPRによると、ワシントンDCにあるセオドア・ルーズベルト橋の改修工事を請け負うルリク・パロミノは「仕事は有り余っているが人手が足りない」と述べ、「ボルチモア−ワシントン・パークウェイにICEの検問所が設置され、労働者が出勤をためらっている」と語った。パロミノは合法身分者のみを雇用しているが、取り締まりの噂だけでも人員が減ることが頻繁にあると説明した。
国土安全保障省によるとトランプ大統領の2期目発足以降、ICEは40万人を送還し、160万人が自発的に出国した。フロリダとミネソタでは建設現場の取り締まりで数十人が逮捕され、ロサンゼルス(LA)地域の資材店舗近くでも取り締まりが続いた。米建設業協会(AGC)が実施した調査では92%の企業が採用難を経験しており、28%は取り締まりで直接・間接の被害を受けたと答えた。
ケン・シモンソンAGC主席エコノミストは「労働者が一日でも欠ければ工事が止まり、費用が即座に上がる」と述べ、「屋根を載せられなければ建物を完成できない」と語った。シモンソンは「法執行がさらに強化されれば、今は始まりにすぎない」と懸念を示した。
セルヒオ・バラハス全国ヒスパニック建設連合代表は「取り締まり件数より恐怖が問題だ」と述べ、「登録の有無にかかわらずラテン系労働者が出勤を諦めている」と語った。バラハスは一部の業者が取り締まりを避けるためトラックの商号を外して走らせていると伝えた。
米住宅建設協会(NAHB)は人手不足で毎年約110億ドルの損失が発生していると推計した。ジム・トービンNAHB会長は「労働力不足は取り締まり以前から構造的な問題だった」と述べ、「米国は大学中心の社会となり技能職の価値を自ら低く見積もった」と語った。
30年間配管業に従事してきたケニー・マリクは「移民は送還のリスクを甘受して働いている」と述べ、「移民がいなければ米国の建設業は回らない」と語った。マリクはトランプ支持者だが「政府が労働者を奪えば産業は崩壊する」と付け加えた。
ニック・セオドア・イリノイ大学都市経済開発センター所長は「不法移民がすでに建設業の収益基盤だった」と述べ、「取り締まりが熟練工不足と技能ギャップを深刻化させている」と分析した。マーク・エアリッヒ・ハーバード・ロースクール研究員は「労組組織率の低下と政治的取り締まりが賃金停滞と経営の不確実性を同時に高めている」と語った。
パロミノは「解決策は合法ビザの拡大にある」と述べ、「自分は鞄一つを持って米国に来たが、今は3家族が自分の会社で働いている。これが本当のアメリカン・ドリームだ」と指摘した。
経済学者は、大規模送還政策は短期的には政治的支持層を結集させる可能性があるが、長期的には建設人員の空白による住宅供給の遅延とインフレ圧力の拡大などブーメランになり得ると指摘した。米国経済政策研究所(EPI)は建設人員が140万人消える場合、生産性低下によって最大86万件の雇用が連鎖的に減少し得ると分析した。
ハイディ・シアホルツEPI政策理事は「移民統制と景気刺激の間で政権がどのような均衡を選ぶかが今後の米国景気の流れを左右する」と述べ、「大規模送還は政治的には効果があるかもしれないが、経済的には住宅供給の遅延と物価圧力の拡大を招く可能性が高い」と語った。