世界首位の半導体企業であるエヌビディアの最高経営責任者(CEO)ジェンスン・フアンが5日(現地時間)、中国は低いエネルギーコストと柔軟な規制を武器にAI競争で米欧を凌駕すると明らかにした。米中の技術覇権競争の行方を握る中心人物が「中国のAI勝利」を公言したことで、シリコンバレーとワシントン政界に相当な波紋を広げる見通しだ。
ジェンスン・フアンは5日、英国ロンドンでフィナンシャル・タイムズ(FT)が主催した「AIの未来サミット」で「中国がAIレースで勝利する(China is going to win the AI race)」と述べた。
ジェンスン・フアンは中国が破格のコスト削減と迅速かつ効率的な規制という二つのカードでAI産業に没頭していると分析した。FTによると、ジェンスン・フアンは巨大AIモデルを訓練・運用するデータセンターに言及し「中国は(西側より)はるかに低いエネルギーコストを武器にしている」と述べた。
一方で米国、英国など西側陣営には強い批判を浴びせた。フアンは西側がAI技術の潜在力よりもリスクを強調する「シニシズム(cynicism)」にとらわれていると指摘した。AIの安全、倫理、潜在的脅威などに関する議論を過度に進める過程で技術発展の速度が落ちているという主張である。ジェンスン・フアンは「我々(西側)にはもっと多くの楽観主義が必要だ」と述べた。
ジェンスン・フアンの今回の腹をくくった発言は、エヌビディアが置かれた「政治・経済的ジレンマ」をそのまま反映する。エヌビディアは現在AIチップ市場の80%以上を掌握する独占的企業である。しかし最大市場である中国への進出は、トランプ政権が主導する強力な輸出規制によって事実上塞がれている。
今回の発言はドナルド・トランプ米国大統領と習近平中国国家主席が首脳会談を行った直後に出た。当初トランプ大統領は、エヌビディアの最新鋭AIチップ「ブラックウェル(Blackwell)」の販売問題を習主席と協議する可能性を示唆していた。しかし主要メディアによると、今回の会談でエヌビディアのチップ問題は結局議論されなかったと伝えられた。
現在エヌビディアと競合のAMDは、中国市場向けに別途製作した低性能AIチップの売上の15%を米政府に支払うことで合意している。FTは「これさえも米政府が関連規定の採択を先送りしており、事実上販売が中断された状態だ」と伝えた。