ドナルド・トランプ大統領が暗号資産（仮想通貨）取引所バイナンス創業者のチャンポン・ジャオを恩赦した後、ジャオの企業がトランプ一族が主導する暗号資産事業に技術的に関与していた事実が明らかになった。恩赦以前からバイナンスはトランプ家が共同設立した暗号資産プラットフォーム「ワールド・リバティ・ファイナンシャル」と協力関係を結んでいた。
4日（現地時間）のブルームバーグ通信によると、ジャオは2023年にバイナンスがマネーロンダリング対策（AML）規定を適切に履行せず米国法に違反した容疑を認め、最高経営者の職を退いた。ジャオは禁錮4カ月の判決を受け、前年9月に釈放された後にトランプの恩赦を受けた。ジャオはソーシャルメディア（SNS）X（エックス、旧ツイッター）に「大統領の決断に深く感謝する」と明らかにした。
バイナンスとワールド・リバティ・ファイナンシャルの接点はステーブルコイン「USD1」だ。バイナンスはUSD1のベースコードを作成しており、このコインは米ドルの価値と1:1で連動するよう設計された。当該ステーブルコインはローンチ直後、アラブ首長国連邦の政府系ファンドMGXがバイナンスに20億ドルを投資し、初期の資金基盤を強化した。MGXの選択により、ワールド・リバティ・ファイナンシャルはステーブルコイン準備金から発生する利子収益を通じて数千万ドルを稼ぐ可能性を確保した。
ワールド・リバティ・ファイナンシャルはトランプ大統領の家族と不動産デベロッパーのスティーブ・ウィットコフ一族が共同設立したプラットフォームで、トランプ側は親会社の持ち株を38%保有している。ブルームバーグ通信によると、トランプ一族は当該事業を通じて5億ドル（6750億ウォン）以上を稼ぎ、225億個の自社トークンを保有しており、数億ドル規模の評価価値を持つと推定された。
倫理監視団体と民主党の議員は、大統領の家族が直接暗号資産事業に関与することで政策決定が私益と衝突し得ると批判した。トランプ家はこうした疑惑を否定し、ホワイトハウスは「トランプ大統領は財務を含めあらゆる側面で歴史上最も透明な大統領だ」と反論した。
かつてビットコインを「詐欺のように見える」と批判していたトランプは、2期目で暗号資産業界の最大の擁護者へと転じた。トランプはビットコイン基盤の違法取引所「シルクロード」創業者ロス・ウルブリヒトを恩赦したのに続き、アーサー・ヘイズ、ビットメックスの共同創業者も恩赦した。さらにジャオまで恩赦し、業界との緊密な歩調を続けた。
バイナンスはジャオ退陣後も莫大なグローバル影響力を維持している。AML違反で40億ドル超の罰金を支払ったが、依然として世界の取引量ベースで最大の暗号資産取引所の地位を守っている。ジャオは有罪答弁によって刑期を短縮する代わりに経営権を失ったが、依然としてバイナンス株式を相当部分保有しているとされる。
政界と金融界では、トランプの恩赦決定が私的な利害関係と絡んでいるとの疑惑が提起された。ジャオが率いるバイナンスがトランプ一族の暗号資産事業に技術支援を提供し、その直後にトランプがジャオを恩赦した点で「利益相反の疑惑」は不可避だとの指摘が出た。トランプ大統領はCBS「60ミニッツ」のインタビューで「ジャオが誰なのか知らない」と釈明したが、恩赦と経済的利害が結び付いた状況は依然として論争として残った。
一方、バイナンスとワールド・リバティの協力は、政治権力とデジタル資産市場の境界が曖昧になる象徴的事例とされる。ジェイソン・ブリクマン、カーネギー国際平和財団のデジタル・ガバナンス研究員は「政権と暗号資産産業の結合は短期的には市場に好材料として作用するが、長期的には公共の信頼を損なう潜在的リスク要因だ」と警告した。