現代自動車グループが自動運転技術開発の総括責任者としてエヌビディア出身のパク・ミヌ(48・写真)博士を迎え入れた。世界最大の人工知能(AI)チップメーカーであるエヌビディアとの協力を強化し、テスラなどの先頭グループに追いつく狙いと受け止められている。ただし完成車業界では、現代自動車グループがトップ交代を通じて技術水準を引き上げるには、まず分散している自動運転開発組織の力量を効率的に結集させるべきだとの意見が出ている。
現代自動車グループは13日、パク・ミヌ博士を新任AVP本部長(社長)兼42dot代表に選任したと明らかにした。AVP本部は車載ソフトウエアと次世代車プラットフォーム開発を、42dotはソフトウエア中心車両(SDV)開発をそれぞれ担当する。2021年からこの組織を率いてきたソン・チャンヒョン前社長は、約4年にわたり目立った成果を出せないまま2024年12月初めに退いた経緯がある。
パク社長は1977年生まれで、現代自動車グループ内で最年少の社長に抜てきされた。コリョ大学電気・電子・電波工学科を卒業後、米ペンシルベニア州立大学で電気電子工学修士、コンピュータ工学博士の学位をそれぞれ取得した。2015年にテスラに入社して2年余り勤務した後、2017年6月から2025年1月まで約10年間、エヌビディアで自動運転技術開発を主導した。
2024年、テスラが完全に近い自動運転技術であるFSD(Full Self-Driving)を商用化し、現代自動車グループは非常態勢に入っている。このため、できるだけ早期にFSDに匹敵する自動運転技術を実現するべく、最近エヌビディアとの戦略的協業を模索している。エヌビディアは年初、米ラスベガスで開かれた「CES 2026」で自社開発の自動運転プラットフォーム「アルファマヨ」を公開した。
パク社長はテスラでオートパイロット開発に参加した。エヌビディアでは自動運転ソフトウエアの開発と量産、自動運転プラットフォームの適用などを成功裏に主導したとの評価を受ける。エヌビディアと手を組みテスラを追撃することに注力すべき現代自動車グループにとって最適の人材だと言える。
実際に完成車業界では、パク社長をつなぎ役として現代自動車グループとエヌビディアの協業が強化されるとの見方が出ている。現代自動車グループは国内の大規模AIインフラ構築に向け、エヌビディアから最新チップ「ブラックウェル」5万枚の供給を受けることにした。これに加えエヌビディアは自動運転プラットフォームなども提供する。このエコシステムに合流するだけでも一定水準以上の技術を確保できるとの見通しが多い。
イ・ジェイル ユジン投資証券研究委員は「レベル2(部分自動化)以上の自動運転技術力において圧倒的な競争力を持つ企業はテスラであり、その後を中国の新興ブランドが追っているが、これらの共通点はエヌビディアの自動運転エコシステムに合流している点だ」と述べ、「現代自動車グループは出遅れたが、試行錯誤を最小化し、より低い費用でより短期間にレベル2以上の先頭グループに合流できるだろう」と期待を示した。実際、エヌビディアのオリンチップを使う中国のBYDをはじめ、シャオミ、シャオペン、ファーウェイなどはエヌビディアとともに短期間でテスラと同程度の自動運転技術の実装に成功した。
完成車業界の関係者らは、パク社長が力量を発揮するには、複数に分散したグループ内の自動運転技術組織を速やかに効率化または統合することが最も重要だとみている。
現代自動車グループで自動運転技術を研究する組織はAVP本部と42dotのほか、米国で運営する子会社のモーショナルがある。モーショナルは特に無人ロボタクシーの開発と商用化に集中しているが、成果は競合に比べ遅れている。すでにグーグルの持株会社アルファベットの自動運転ロボタクシーサービス「ウェイモ」などが商用化されている一方、モーショナルは当初2024年を目標としていた商用化の時期を今年へと2年延期した経緯もある。モーショナルのほか、R&D本部も自動運転とSDV開発などの役割を分担している。
自動運転開発を担当する組織が分散している点は、現代自動車グループが多額の投資をしながらもテスラなどに比べ十分な成果を出せなかった理由に挙げられてきた。特にモーショナルとR&D本部は別個にトップを置いており、パク・ミヌ社長のリーダーシップがどこまで影響を及ぼすかは現時点で不透明だ。モーショナルは2024年6月からローラ・メジャー最高経営責任者(CEO)が率いており、R&D本部長には昨年末にマンフレッド・ハラー社長が任命された。
現代自動車グループは将来の成長ドライバーに対する責任を複数の系列会社で分担する戦略を採っている。ロボティクスが代表例だ。設計と技術開発は米子会社ボストン・ダイナミクスが、製造現場への適用と技術検証は現代自動車・起亜が担当する。現代モービスはアクチュエーターなどの中核部品を供給し、現代オートエバーはシステム統合とロボット管制を担う。
ロボティクス事業の場合、各系列会社の役割が明確に分かれており、これを結合して最終製品を作る構造になっている。一方で自動運転開発は各組織の役割が依然として不明確で、互いに先に目立つ成果物を出そうと競争する状況のため、力量の結集が難しく、方向性の面でも混乱を来しているとの業界の指摘だ。
パク社長は就任後、AVP本部と42dotを含む各組織の成果と課題などを点検する見通しだ。現代自動車グループ関係者は「まだ自動運転関連組織の改編や統合計画はない状況だ」とし、「パク社長が技術開発のスピードを最も効率的に高められる方策を決めれば、グループ経営陣の審査を経て組織改編が行われる可能性がある」と述べた。