韓国のバッテリー業界が新たな収益源とされるエネルギー貯蔵装置(ESS)市場を攻略しているが、電気自動車市場の低迷に伴う業績不振を挽回するのは難しいとの見方が出ている。ESSバッテリーは電気自動車用に比べ供給量が少ないうえ、すでに市場を先占した中国との価格競争により収益性も期待に届かないためだ。
5日にエネルギー業界によれば、韓国のバッテリー企業は過去に完成車メーカーと結んだ供給契約が相次いで解消され、苦境に直面している。電気自動車のキャズム(Chasm・一時的な需要停滞)が続き、完成車各社が電動化戦略を修正して再び内燃機関車への投資に動いたためである。
LGエナジーソリューションは2024年12月、米完成車メーカーのフォード、米バッテリーパック製造会社FBPSと結んだ電気自動車用バッテリー関連の供給契約が解消されたと明らかにした。解消された契約の規模はそれぞれ3兆9000億ウォン、9兆6000億ウォンに達する。フォードは電動ピックアップトラックの生産を中止し、FBPSはバッテリー事業から撤退することを決めた。
L&Fはテスラと3兆8347億ウォン規模の正極材を供給する契約を結んだが、実際に納入した物量は973万ウォンにとどまったと公示した。SKオンは米フォードと設立したバッテリー生産合弁会社ブルーオーバルSKを解散することにした。LGエナジーソリューションは日本のホンダと米オハイオ州に設けたバッテリー合弁工場の土地や建物などをホンダに処分することにした。
ドナルド・トランプ米政権が2024年9月に電気自動車購入者向けの税額控除を終了したことで、電気自動車市場の需要は引き続き萎縮するとの見方が多い。これを受け韓国のバッテリー企業は最近、電気自動車用ではなく人工知能(AI)データセンター建設で需要が伸びるESS用バッテリー生産に目を向けている。
問題は、ESS市場ではエネルギー密度は低いが価格が安く火災リスクが低いリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーの採用比率が高い点である。LFPバッテリー市場は中国のバッテリー製造企業が主導しており、韓国勢は高価で品質の良い三元系(NCM)バッテリーに強みを持つ。
米調査会社ブルームバーグNEF(BNEF)は、2027年に世界のESS市場でLFPの採用比率が94%まで上昇すると予測した。
事情がこうした中で、韓国のバッテリー各社は最近、ESSバッテリー市場攻略のためLFPバッテリーの技術開発と設備転換に注力している。
LGエナジーソリューションは米ミシガン州ホランド工場の一部ラインをESS向けに転換し、6月から量産を始める計画である。SKオンも今年下半期からESS専用LFPバッテリーの量産に入る。サムスンSDIは年末ごろまでに米国内のESS用バッテリー生産能力を年30ギガワット時(GWh)まで拡大する方針だ。
しかし業界では、ESSバッテリー市場自体が電気自動車用バッテリー市場より小さく、契約が連続的ではないため、業績改善効果は大きくないとの意見が多い。
あるバッテリー業界関係者は「電気自動車用バッテリーは新モデルの発売時期に合わせて一度に6年から10年ずつ供給契約を結ぶが、ESSバッテリーの契約期間はデータセンターを建てる期間の2年程度にすぎない」と語った。関係者は「データセンターは一度設置すれば終わる一回性の契約が大半で、次の受注も保証されない」と付け加えた。
100GWh級ギガファクトリーを運営する韓国のバッテリー企業にとって、ESSバッテリーの受注規模は微々たるものだ。足元でAI市場が拡大し、データセンターの電力消費量も500MWh(メガワット時)〜1GWhに拡大しているが、100GWh工場の立場では全体稼働率の1%にも満たない水準である。
イ・チュンジェ韓国投資証券研究員は「世界最大のバッテリーエネルギー貯蔵装置(BESS)の単一契約規模は3〜4GWh水準だが、100GWh級の設備では数ラインを回せば足りる程度だ」と述べ、「韓国のバッテリー製造企業がESS市場を通じて原価を下げ、収益を上げるのは難しい」と説明した。
LFPバッテリーの受注が伸び続けても、バッテリー製造企業の工場稼働率が急速に上昇するのは難しいとの予想も出ている。2024年上半期時点でSKオンの工場稼働率は52%、LGエナジーソリューションとサムスンSDIはそれぞれ51%、44%にとどまった。
中国のバッテリー企業との価格競争も重荷だ。中国は世界のLFPバッテリー市場で事実上の独占的地位を持つ。米最大のESS事業者であるテスラでさえ、メガパックに搭載するLFPセルを中国CATLから大量に調達している。
もっとも業界では、米国が中国への関税障壁を引き上げる中で、韓国企業の米国ESS市場におけるシェアは継続的に上昇するとの見方が多い。米国は現在、中国産ESSバッテリーに40.9%の関税を課しており、今年から税率を58.4%に引き上げる計画だ。