米国が70年ぶりに黒鉛採掘を再開するなど、中国産黒鉛の排除を加速している。非中国圏で唯一、黒鉛系負極材を量産できるポスコフューチャーエムが恩恵を受けるかに注目が集まる。
2日、AP通信などによると、米タイタン・マイニング(Titan Mining)は前年末、カナダ国境から約40キロメートル(㎞)離れたニューヨーク州北部に黒鉛採掘のための試験施設の建設を開始した。
タイタン・マイニングは2028年の商業販売を目標に、年間4万トン規模で黒鉛を採掘する計画だ。米国の天然黒鉛需要の約50%に当たる数量である。リタ・アディアニ、タイタン・マイニング最高経営責任者(CEO)はAP通信に対し「中国は信頼できるサプライチェーンのパートナーとは見なせない」と述べ、「当社が米国需要の相当部分を供給できる」と語った。
黒鉛は電気自動車用リチウムイオン電池の負極素材として最も多く使用される鉱物である。電池業界によると、電気自動車用電池1個当たりの黒鉛含有量は約20〜30%で、単一鉱物としては最も多い。原価ベースではリチウムイオン電池の約15%を占める。
特に代替品がない点で極めて重要な素材である。ブルームバーグ通信によると、リチウムイオン電池の需要が増加するにつれ、2030年の黒鉛需要は現在の約10.5倍に増える見通しだ。
米国の黒鉛鉱山の大半は1950年代に閉鎖された。米国地質調査所国立鉱物情報センターによると、現在、米国内で商業的に黒鉛を生産する鉱山はない。ただし資源安全保障の重要性が高まるなか、タイタン・マイニングに加え、アラバマ州で2カ所、モンタナ州とアラスカ州でそれぞれ1カ所、合計4カ所の黒鉛鉱山が採掘準備中である。
米政府も積極的だ。かつてのジョー・バイデン政権は2022年のインフレ抑制法(IRA)に重要鉱物生産の税額控除を含めた。ドナルド・トランプ政権も中国以外の国々と重要鉱物協定を締結した。政府資金の支援も行う。米輸出入銀行はタイタン・マイニングに最大1億2000万ドルを融資する案を検討中だ。これとは別に、黒鉛採掘のフィージビリティ調査だけで550万ドルを支援する予定である。
米国内の黒鉛需要は2020年以降、増加傾向にある。米国地質調査所によると、米国の黒鉛消費量は2020年の3万トンから4万4300トン(2021年)、7万9700トン(2022年)へと増加し、2023年に入って7万6000トンへ小幅に減少した。ただし米国内で生産される黒鉛がないため、全量を輸入している。
米国や韓国をはじめ各国は黒鉛の大半を中国に依存している。黒鉛は中国、トルコ、マダガスカル、モザンビークなど世界各地に埋蔵されているが、採掘された鉱物の大半が中国で加工されるため、中国依存度が高い。
世界で生産される黒鉛のうち、天然黒鉛の99%、人造黒鉛の96%が中国で加工される。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)によると、2023年時点で韓国は天然黒鉛の97.2%、人造黒鉛の95.3%を中国から輸入した。
エネルギー業界では、米国の黒鉛生産が再開されればポスコフューチャーエムに新たな機会が生じる可能性があるとの見方が出ている。米国が中国産黒鉛の排除に積極的だからだ。
トランプ政権が海外懸念企業(FEOC)要件を施行したことで、米国内の電池メーカーは海外懸念企業に該当する中国企業からサプライチェーンの自立を図らなければならない。海外懸念企業に指定された国の企業・団体・機関の重要鉱物を電気自動車用電池に使用すれば、インフレ抑制法(IRA)に基づく補助金の支給を受けられないためである。
黒鉛については海外懸念企業要件の適用が2026年まで猶予された。それまでにポスコフューチャーエムは中国を離れた黒鉛サプライチェーンの拡大に注力すべきだ。ポスコフューチャーエムは、モザンビークで鉱山を所有・運営する豪州シラー・リソーシズ(Syrah Resources)と2024年、天然黒鉛の供給契約を締結した。
ポスコフューチャーエムの関係会社であるポスコインターナショナルは、豪系鉱業会社ブラックロック・マイニングと、アフリカのタンザニア・マヘンジ鉱山への持分投資を通じて天然黒鉛の長期オフテイク権を確保した。ここに米国生産の黒鉛まで活用する場合、米国市場での地位を一段と強固にする可能性が高まる。
ポスコフューチャーエムの関係者は「米国が黒鉛採掘に本格的に乗り出すまでには相当な時間がかかる見通しだ」としつつも、「米国が黒鉛自立に動いたことは長期的にプラスのシグナルだ」と述べた。