現代自動車グループの役員人事が間近に迫るなか、イ・ヨンベ現代ロテム代表取締役(社長)の3期連続留任の可否にグループ内外の関心が集まっている。イ社長は大規模赤字を計上していた現代ロテムの収益性と事業ポートフォリオの改善の双方に成功したとの評価を受けている。
ただしグループ一部では、イ社長の3度目の連任は容易ではない可能性があるとの見方も出ている。現代自動車グループは鄭義宣(チョン・ウィソン)会長が2018年に首席副会長に就任して以降7年間進めてきた経営陣の世代交代が完了する時点にあるためだ。
イ社長が現代自動車副社長と現代車証券代表として働いていた鄭夢九名誉会長時代にともにグループを率いた人物の大半は会社を去った状態だ。また任期中に現代ロテムの談合が摘発され、国政監査でロビー疑惑が噴出したことなどは負担要因である。
16日、業界によると、現代自動車グループは近く役員人事を通じてイ社長をはじめとする系列会社の最高経営責任者(CEO)の去就を決定する予定だ。イ社長の任期は来年3月までだ。2020年の就任以後すでに一度連任し、グループ内の「最長寿CEO」というタイトルを保有している。3年の任期を満了することが珍しい現代自動車グループでは異例の事例である。
イ社長は、グループが任せた現代ロテムの救援投手の役割を成功裏に果たしたとの評価を受ける。現代ロテムは2017年に営業利益が454億ウォンに縮小した後、2018年と2019年にそれぞれ1,962億ウォン、2,799億ウォンの営業損失を出した。グループの代表的な「痛い指」と呼ばれ、売却説まで流れた。
イ社長は就任と同時に非常経営体制を稼働し、収益性重視の強度の高い内実経営を推進した。現代ロテムの財務構造を蝕んでいた安値受注の根絶にも乗り出した。
その結果、就任初年度から821億ウォンの営業利益を上げて黒字転換した。昨年は4,566億ウォンの営業利益を計上し、過去最大を記録した。今年も第3四半期累計ベースで前年同期比150%急増の7,832億ウォンの営業利益を上げ、すでに昨年の成績を上回った。
加えて、なかなか力を発揮できなかった鉄道事業(レールソリューション部門)の売上も現時点で1兆5,000億ウォンに迫るなど、事業ポートフォリオ調整の任務も完遂した。現代自動車グループ関係者は「良好な実績のおかげでイ社長が3連任も可能だという見通しが多い」と述べた。
しかし一部では、世代交代の必要性が連任の障害になり得るとの予想も出ている。イ社長は1961年生まれで今年64歳だ。現代自動車グループの上場会社12社の中で、イ社長より年齢が高い社長はいない。
サムスンやSK、LGなど主要グループの最近の人事キーワードは世代交代だ。現代自動車グループも最近、総合広告代理店のイノーションのCEOに1973年生まれのキム・ジョンア社長を抜擢した。
イ社長は事実上、唯一残った鄭夢九現代自動車グループ名誉会長時代の人物でもある。イ社長は1987年に鄭夢九会長が率いていた現代精工に入社した。その後、現代自動車で2005年に会計管理室長(理事待遇)として役員に就き、企画調整3室長(副社長)、現代車証券代表取締役(社長)などを歴任した。2010年、鄭名誉会長が故チョン・ジュヨン創業者が築いた現代グループの母体企業である現代建設を買収した際には経営企画を担当し、相当程度寄与したとされる。
このほか、イ社長の任期中に現代ロテムで談合とロビー疑惑が浮上したこともマイナス要因として挙げられる。現代ロテムは2022年の国内列車購入入札で談合した事実が摘発され、過料323億ウォンの賦課を受けたが、その後、談合事実を最も早く自主申告したという理由で過料全額が免除され、論議を呼んだ。現代ロテムと談合した残る2社は中小企業であるにもかかわらず、それぞれ148億ウォン、94億ウォンの過料を科された。
今年の国会国政監査では、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権で現代ロテムが特恵を受けたとの疑惑が提起された。当時、祖国革新党のチャ・ギュグン議員は、対外経済協力基金(EDCF)の現代ロテム関連の支援規模が対開発途上国予算の24%に達すると指摘した。チャ議員は「国内事業で現代ロテムとミョン・テギュン間のロビーの状況がすでに明らかになったなか、海外受注にまでつながったのではないか、徹底した調査が必要だ」と主張した。