韓国水力原子力(韓水原)と数年にわたり知的財産権(IP)を巡る紛争を続け、2025年1月に劇的に和解した米ウェスチングハウスが、ポーランドの新規原発受注市場に挑む。チェコ原発の受注時にウェスチングハウスに対し今後は欧州市場で受注しないと約束した韓水原は、今回の入札に参加できない。
IP合意が伝わった当時、原子力業界の一部では、大型原発を単独で建設する能力が不足するウェスチングハウスが韓水原中心のチーム・コリアと協業するとの楽観的な見方も出ていた。だがウェスチングハウスは、実際の原発建設を主に米国のエンジニアリング企業と進めている。
5日に原子力業界によると、ウェスチングハウスは今月初め、ポーランドのポメラニア州に第1原発を建設するため、ポーランド原電公社(PEJ)とエンジニアリング開発協約(EDA)を結んだ。原発建設に向けた設計・調達・建設(EPC)本契約の締結を前に、詳細計画を精査する予備作業に当たる。
ウェスチングハウスは米エンジニアリング企業ベクテルとコンソーシアムを組んでポーランドでの初の新規原発建設の受注戦に参加し、2022年に事業者に選定された。9月にポメラニア州政府から原発事業に関する予備工事の許可を受け、用地測量、仮設技術施設および建設現場の準備、地形の平坦化など予備工事を進めている。第1原発は2033年の稼働を目標としているが、斗山エナビリティなど韓国の原発機器企業が関連受注を得た事例はない。
原発業界では、ウェスチングハウスは大型原発を単独で建設する能力が不足していると評価する。原子炉設計やIPは保有しているものの、数十年にわたり米国で新規原発を建設しておらず、大規模建設を遂行する能力や人員が不足している状況だ。
先に2017年、ウェスチングハウスは米サウスカロライナ州でVCサマー原発を建設中に、費用超過や工期遅延などの困難に直面し、最終的に中断した。施工管理、サプライチェーンの確保、コスト統制など、ウェスチングハウスの建設能力の不足をそのまま露呈した事例だ。
このためウェスチングハウスが新規原発を建設するには堅固なEPC能力が必要であり、韓水原を中心とするチーム・コリアと協業するとの期待があった。韓水原は納期遵守能力や価格競争力などが認められ、チェコの新規原発の事業者に選定された。ウェスチングハウスと争っていたIP訴訟が決着し、「共存共栄」への期待感が高まっていた。
しかし現実は期待と異なる。第1原発の事業者である米ウェスチングハウスは第2原発の受注も狙っており、米国企業と組んで参加する可能性が高いとの見方が専門家の大勢だ。
ポーランドはウクライナに接する地政学的特性上、原発建設が国家安全保障に直結する。ロシアが欧州の安全保障を引き続き脅かす状況で、米国政府や企業がポーランドで原発を建設することが国益に資すると判断されているためだ。
ポーランド政府は第2原発の建設に向け海外の複数企業と接触しているが、韓水原は当初から排除されたと伝えられる。先月初め、ポーランド政府から韓水原が競争協議への参加招請状を受け取ったとの海外報道があったが、韓水原関係者は「事実ではない」と否定した。
韓水原はチェコを除く欧州での新規原発受注をすべて断念した状況だ。ウェスチングハウスからの要請がなければ再参入は難しい。IP合意により、韓水原・韓電は北米、欧州、ウクライナなど特定地域で原発受注活動が制限されている。実際、韓水原はポーランドのみならずスウェーデン、スロベニア、オランダなど力を入れていた欧州の原発市場からすべて撤退した。
チョン・ヨンフンKAIST原子力工学科教授は「ポーランド政府は国家安保のため米国政府と協議しながら原発を建設している。安保を考慮すれば、ウェスチングハウスが海外企業よりも自国企業と継続して協業する可能性が大きい」と述べた。
ある原発業界関係者は「韓水原とウェスチングハウスは原発建設プロジェクトの主事業者として役割がいくぶん重なる。韓水原が原発を受注すればウェスチングハウスと必ず協業しなければならないが、ウェスチングハウスの立場は異なる。ただし韓水原以外の国内機器企業などには機会が開かれている」と語った。