最近、韓国の主要企業の取締役会案件で人工知能(AI・Artificial Intelligence)の比率が増えている。 サムスン電子(005930), SKハイニックス, 現代自動車をはじめとする主要企業は、生成型AI(既存データを活用して画像・コードなど新たなコンテンツを作るAI技術)への投資と組織転換を将来の成長戦略の中核に掲げている。AIはもはや技術部門のプロジェクトではなく、企業価値と競争力を左右する経営アジェンダになった。
最近の流れはさらに加速した。ジェンスン・フアンNVIDIA最高経営責任者(CEO)の訪韓以後、韓国の主要グループとグローバルAI企業の間で協力協議が浮上し、 SKテレコムはNVIDIAと手を組み、AIファクトリーを基盤とする「フルスタックAIクラウド」事業に参入すると明らかにした。AIインフラ投資が本格化するなか、企業は投資スピードと成果実証という二つの圧力を同時に受けることになった。投資熱気に比例して負担も大きくなっている。
AI投資の発表、データセンター構築、生成型AIサービスの発売が続くほど市場の期待は高まる。だが実際の収益化時点は依然として不確実だ。財界では「AIをしないこともリスク(危険要因)だが、誤った投資もリスク」という認識が広がっている。
◇ AI導入スピードをめぐり食い違うCEOと取締役会
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が発表した「AI엔 한목소리 내는 CEO·이사회, 실행 단계에선 온도차(CEOs and Boards Are Aligned on AI in Theory, but Divided in Practice)」レポートによると、こうした現実が示されている。CEOと取締役会はAIの重要性には同意しつつも、実行の方式とスピード、責任構造では相当な見解の相違を見せた。
最大の差はAI導入スピードで表れた。調査によれば、CEOのおよそ60%は取締役会がAI転換を過度に急いでいると感じる一方、取締役会は企業が十分なスピードを出せていないとみた。
BCGはこれを「AIフォモ(FOMO・Fear of Missing Out・良い機会を逃すことへの不安)」現象と説明する。AIへの理解が不足するほど出遅れる不安が大きくなり、より攻撃的な投資圧力につながり得るということだ。
AI理解度でも温度差が出た。取締役会メンバーの75%は、自身のAI理解度が同僚取締役と同程度かそれ以上だと評価した。しかしCEOの40%は、取締役会がAIが実際にできる領域を過大評価しているか、AIが成長戦略に与える影響を十分理解していないと答えた。
◇ AI戦略は経営陣の所掌だが、実行の重荷はCEOに
問題は責任構造だ。CEOと取締役会の双方がAI戦略は経営陣が主導すべきだと答えたが、実際の実行過程ではCEOに負担が集中していた。
調査でCEOの47%は、自身がAI戦略の実行を直接率いていると応答した。一方、最高AI責任者(CAIO)がAI戦略を主導すべきだと答えた比率は10%にも満たなかった。
AIは組織構造と資本配分、人員運用、事業モデル転換を同時に揺さぶる経営課題だ。韓国企業もAI組織を新設したりCEO直轄の組織に再編する事例が増えているが、最終意思決定の負担は依然として最高経営者に集中する場合が多い。
AI投資成果に対する認識の違いも目を引く。CEOは自身の業績評価のうち平均35%がAI投資の成果と結び付いていると認識した一方、取締役会はその比率を27%水準と評価した。CEOが感じるAI成果へのプレッシャーが取締役会の認識よりはるかに大きいという話だ。
最近の韓国企業も、AI投資の発表やデータセンター構築、生成型AIサービスの発売以後に市場の期待が高まる状況を経験している。だが実際の収益化時点は依然として不確実だ。結局、CEOの立場では「AIをしないリスク」と「成果なしに過度に投資するリスク」を同時に管理しなければならない状況に置かれているということだ。
BCGは、AI転換のリスクが技術そのものよりもCEOと取締役会の間の認識差で大きくなり得ると指摘する。AI導入スピードと投資収益率(ROI・Return on Investment)への期待、責任構造に対する見解の差が大きくなるほど、AI戦略は革新の原動力ではなく組織内の葛藤要因になり得るということだ。
市場もいまやAI投資規模より、誰が責任を負い、いつ成果を生み出せるのかを問うようになった。AI時代の競争力は、どの技術を導入したかよりも、その技術をどこに使い、どのように収益へつなげるかを決める構造で分かれる可能性が高い。CEOに必要なのはAIに関する宣言ではなく、投資と実行、成果を一括でマネジメントする意思決定能力だ。