この記事は2025年11月14日14時16分にChosunBiz MoneyMoveサイトに掲載された。
NH投資証券が数年にわたり注力してきた公開買付け市場での地位が失墜している。投資銀行(IB)部門の上級幹部が未公開情報を利用して不当な利益を得た疑惑に巻き込まれたためである。公開買付けは情報管理が最も重要視される分野であるため、今後取引の受託に支障が生じる可能性があるとみられている。
金融監督院の電子開示システムによれば、今年行われた15件の公開買付けのうち11件がNH投資証券を公開買付け代理人として選んだ。市場シェアは73%に達した計算である。残りは韓国投資證券、ミレアセット証券、KB証券、IBK証券がそれぞれ1件ずつ受託した。
NH投資証券はこのような市場シェアを今後維持できない可能性が大きい。企業とプライベート・エクイティ・ファンド(PEF)運用会社の間でNH投資証券を公開買付け代理人に選ぶことを避ける空気が感知されているためである。NH投資証券は2023年9月に業界で初めて公開買付けのオンライン申込システムを導入するなど市場開拓に努めてきた。
NH投資証券を通じて公開買付けを進めたあるPEF運用会社の場合、追加公開買付けを推進する過程で「今からでも代理人を交代すべきではないか」という社内意見が出たことが確認された。ただし代理人の途中交代が不必要な関心を招くことを懸念し、そのまま公開買付けを進めたと伝えられた。
ダゾンビズオンの買収を推進している外資系PEF運用会社EQTパートナーズは、まだ公開買付けの実施の可否を確定できていない。公正取引委員会の企業結合審査など変数が多く、公開買付けは後回しにされていると伝えられた。
しかし買収推進の過程で公開買付けが確定していれば、業界首位のNH投資証券の就任が有力だったと業界関係者は分析している。現在は未公開情報利用疑惑に加え他の証券会社の積極的な営業により、仮に公開買付けが決定してもNH投資証券が仕事を独占するとは限らないという雰囲気である。
IB業界のある関係者は「公開買付けを行う企業や運用会社の立場では情報漏洩を懸念せざるを得ない状況だ」と述べ、「万が一投資情報が競合他社に流れた場合、困った事態が発生する」と語った。続けて「わざわざ問題があったNHよりは他の証券会社を考えるのが自然な選択だ」と付け加えた。
NH投資証券は公開買付けで取引の足掛かりを作った後、買収ファイナンスやブリッジローンなどでも追加収益を上げてきたため、今後IB部門の収益性が大きく揺らぐとの分析が出ている。NH投資証券は公開買付けを主宰したビオールとJTC、SK D&Dの公開買付け取引で買主に借入金も提供し、手数料のほか200億ウォン台の収益を上げた。
他の証券会社を選んだとしてもNH投資証券よりサービス品質が劣るわけではない。現在公開買付けのオンライン申込システムを備えた証券会社はミレアセット証券とサムスン証券、メリッツ証券、KB証券、韓国投資證券、シンハン投資証券などである。買収ファイナンスに注力するKB証券や韓国投資證券などが最も多くの恩恵を受けると見られる。
今回の事件でNH投資証券は信頼回復に矢継ぎ早に取り組んでいる。幹部を対象に国内株式取引を制限し、内部統制タスクフォース(TF)まで立ち上げた。株式取引制限をIB事業部の全社員に拡大する方向も検討したが、社員の反発が強いと伝えられた。
先月末、株価操縦根絶合同対応団はNH投資証券の上級幹部がここ2年余にわたり公開買付けに関する未公開情報を職場の同僚や知人らに繰り返し伝え、これらが当該情報を利用して20億ウォン相当の不当利益を得たと判断し、調査に着手した。調査団は過去3年間に行われた公開買付けの51%(28件)がNH投資証券で行われ、11銘柄に関する情報が流出したと報告している。
NH投資証券の関係者は「公開買付け市場で情報保安と内部統制の強化に全力を尽くしている」と述べ、「最近の企業内部統制TFおよび幹部の国内株式取引制限措置など多様な内部統制策で再発防止と信頼回復に万全を期している」と述べた。